沼と砂

 秋に近づくその時期に、陽の光をさえぎる森は、薄暗く肌寒くて誰をも震え上がらせるようだった。その例外が黙々と歩いている少年だった。彼はあたりの雰囲気に震えることもなく、ただ黙々と歩いている。


 この森は、ただの森でなかった。その森に入れば、最終的に必ずや死に至るといわれている場所であった。なぜなら、その森には地獄の神がいるといわれており、森は地獄の神の領土であり、不正に侵入した者は命を落とす、と言い伝えられているのだ。

 俗にこの森は、“ヘル・フォレスト”と呼ばれている。


 少年はポケナビを取り出し、現在地を確認した。事前にこの森のマップデータを入れておいたのだが、今彼がいる場所のデータはすでになく、現在地がどこなのかはまったくわからない状態になっていた。

 今度は普通の地図を取り出した。森の最深部までいったものがいないから、漠然とした地図データであるが、ちゃんと簡単な地図が載っていた。ポケナビの地図データで、彼がいた最後の地図データを表示させると、その周りの地図と普通の地図を見比べ、現在地を調べた。

「もう少しだな」

 一人つぶやくと、両者をしまいまた歩み始めた。


「ヘル・フォレストには伝説が眠る」

 その言葉は、彼がポケモンリーグの舞台でライバルと戦い、敗れ去った日に部屋に届けられていた差出人不明の手紙に書かれていた。

 彼はヘル・フォレストという名前を、そのときすでに知っていた。現世の地獄で、人が近寄らない場所に伝説が眠る。どうせなにかのいたずら話だろう、とその程度にしか思っていなかったが、選手村から離れるその日の朝にある一冊の本が届けられた。その本には、先日の手紙の内容の裏づけがされていた。

 その本の中に『強力な力を持ったポケモンが存在している』と書かれていた。


 陽が暮れ始め、森の中は夜と同じ世界と化した。少年は、それでもただただ歩き続け、陽が完全に暮れると手ごろな場所を探し、火をたいた。

 彼は本を取り出した。この森について書かれてる、例の届けられた本を。

「本当にいるんだろうか……」と彼はつぶやく。「ポケモンが噂で、地獄の神の伝説が本当だったらしゃれにならねえ……」

 そのとき、どこかの草むらがガサッとなった。少年は瞬時に立ち上がり、ベルトにつけているモンスターボールを一個に手にかける。また、どこからか音が鳴る。静寂に包まれている森の中で、音が鳴ればどの方角かわかるのに、不思議なものでまったくわからない。少年は、かなりのやり手だと予想し、緊張が走る。

 また鳴った。少年の後ろからその音が鳴るのがわかると、すぐさま振り向き、手に持ったボールを投げた――と思われたが、そのボールは手から放たれることはなかった。

 後ろにいたのは、蹴飛ばしたら、すぐやられそうな小さなナックラーただ一匹。そのナックラーをみて、少年はこれほど緊張したのが馬鹿らしくなった。

 ――ほおっておけば、そのうち、いなくなるだろう。

 自分が情けなくなった彼はそう考えた。このナックラーでは、自分を殺すことなどできまい、と。

 翌朝、目を覚ますと驚いたことに、ナックラーが彼の近くで安らかに眠っていた。安らかといえど、別に死んでいたわけではなく、また、どこか怪我をしていたり熱を出していたりするということではなかった。

 少年は、このナックラーが自分を気に入っていることにそれをみてすぐ気がついた。彼の経験上、こういうことをするポケモンは必ず仲間になる。そして、気に入っていたらなおさらである。だが、彼はこのナックラーを仲間にするつもりはさらさらなかった。『強力な力を持つポケモン』を手に入れるためにきたのに、なぜこの弱そうなナックラーを捕まえる必要があるのだろうか?

 簡単な朝食を済ませたとき、ナックラーは起き上がったと思うと彼の前から姿を消した。それをみて少年はホッとした。

 ――俺は見当違いしてたんだな。

 彼が向かう先は、ヘル・フォレストにある沼である。『強力な力を持つポケモン』の調査をしていると、ほとんどが沼にたどり着いていたからだった。だが、沼というやつのイメージは暗く、少年もその点ではいくのに嫌気がさしていた。だが、そのイメージは、出発から一時間ほどたった後、すぐに打ち砕かれてしまった。

 連なる木々は、沼になどありはしなかったが、沼の周りにある木の葉が沼への陽をさえぎっているものの、さえぎられている量は少数で、町にある木の下と同じ光の量で、沼は照らされていた。その沼は、ダーク黄緑とでもいう色をしている泥でできており、中央部には、下へと傾斜が続き、まるで、あり地獄のようなものがある。

 鳥のさえずりが聞こえる以外、何も聞こえない。沼があるエリアだけを切り取れば、まったくの静寂となるであろう。

 ――見当違いだったのか?

 少年はため息をついた。『強力な力を持つポケモン』の情報は噂でしかなかったのだ、と。

 そのとき、後ろからなにやら巨大なオーラを感じた。何か巨大な力を持つものが、少年の後ろを捉えている。後ろが見れない……。さっきまでは、誰かがいたなどとはまったく気がつかなかった。まさか、これが地獄の神の実力なのか。

 そこで気づいた。地獄の神! 自分を殺そうとする悪魔。このままではまずいと察知した彼は、勇気を振り絞り前に走り出し、すばやく後方を振り返り、手に取ったモンスターボールを放つ。ボールからは、ノクタスが召喚された。

「ちょっとまってよ」

 ノクタスが召喚されると共に、女性の声が少年の耳に届いた。それと同時に、彼は女性とリングマが共に立っているのを発見した。

「私はトレーナーじゃないから、あなたと戦うつもりはないもの」

 しばらく、少年がその状況を整理するのに時間がかかった。なぜ、この森の中に、冒険者とはまったく思えない身なりをした――ここに住んでいるとでもいう服装である――女性がいるのだろう。この森は不正に侵入した者は命を落とすというのに……。

 そうか! と彼はそこでやっとひらめいた。『不正に侵入した者』だから、不正に侵入しなければ問題ないのだ、と。

「あなたはいったいここで何をしているの?」女性は少年の悩んでいる様子が、なくなったと思うとそう尋ねた。

「ちょっと迷っちゃって」少年は用心のため嘘をついた。もしかしたら、この女性は見張り番のような役割をしているのではないかとにらんだからだった。それは、女性をみたからではなく、彼女の手持ちであろうリングマをみたからだった。

「ふうん、じゃあ、戻る道を二百円で教えてあげる」不思議な調子で彼女は言った。

「い、いや、いいです。お金もありませんし……」

「何円だったらあるの?」

「え、ご、五十円ぐらいですかね」

「じゃあ、それでいいわよ」

 少年は面食らった。いったい、この人は何を考えているのだろうか、と。とにかく、この人に自分がどうしてきたかを話せば、危ない目にあうと考えている彼は、その場を早く離れたかったから、「結構です」ときっぱり断ったと同時に、その場を後にしようとした。

 だが、女性はそれを引き止めた。

「あなた、『強力な力を持つポケモン』を探しにきたんでしょ?」

 ズバッと心にあることを射られた少年は硬直した。だが、そこは平然に保とうと、そんなことはないと否定した。

「そんなわけないじゃない」と女性は言った。「迷ってる人が、戻る道を教えてあげるっていってるのに――しかも、お金も足りなくてもいいといってるのに、それを受けない人なんていないわ。断る人は、ここにとどまる人。なぜ、ここでとどまるかというのは『強力な力を持つポケモン』を探しているから。探してないでとどまるなら嘘なんてつかないわね」

 何の反論もできない。少年はだんまりしてしまった。

「図星ね」と女性は言った。「じゃあ、お帰り願うわ。別にお金をもらうつもりはないから、道もちゃんと教えるし。そうしないと、あなたは殺されちゃうからね」

「いや、俺はここに残る。俺はその強力な力を持つポケモンを手に入れなければならないんだ」少年はきっぱり言った。

 女性はため息をついた。

「馬鹿なのね、あなたって。ここにとどまるというのは、どういうことになるかわかってるわけ? 要するに死ぬという意味よ」

「そんなことわかってる」

「じゃあ、殺されることはないと思ってるわけなんだ? そんなことができるかしらねぇ。そうだ、あなたにいいことを教えてあげるわよ」――と少し間を空けてから――「その『強力な力を持つポケモン』ってね。この森に言い伝えられてる、地獄の神のことなんだよ」

 少年の表情が思わずこわばり、体もこわばり始めた。今までにない、恐怖心が彼を襲った。

 今まで、『強力な力を持つポケモン』と地獄の神は別のものだとばかり思っていた。『強力な力を持つポケモン』なんて、目じゃないとは思っていたが、地獄の神にはかなわないと思っていた。でも、まさかその『強力な力を持つポケモン』が、地獄の神となれば、怖気づくのも当たり前である。

「さあ、これでも帰らないというわけ?」

 少年は何も答えない。何分たっても……。女性は、その様子をみて少年が怖気づいて、かなしばりにあってしまったと悟り、彼の肩をとって、森に一番近いポケモンセンターへと連れて行った。


 少年はハッと我に返った。だが、目に映るのは低い天井らしきものと、周りが暗いことだけ。

 ――俺は殺されたのか。それとも殺されるのか。

 彼は起き上がった。すると、たった今の考えがまるっきり当てが外れた考えだと気づいた。そこは普通の部屋だった。彼がいる場所は二段ベッドの下であり、その近くにはパソコンが置かれている。

 起き上がり、窓に近づくと月が出ていた。その窓からの景色で彼は、ポケモンセンターの部屋にいることがわかった。このポケモンセンターのこの部屋は、彼が森へ行く前に泊まったところだったのだ。

 森――ヘル・フォレスト――そう連鎖していって、彼は、自分がどうしてここにいるのか不思議に思った。記憶をたどっていけば、最後はヘル・フォレストにいたのだから。そう、そして、ヘル・フォレストの沼であったあの女性についても記憶がよみがえった。もちろん、彼女の言葉も。

「かえるだって?」と少年は声に出した。「冗談じゃない。あそこまでいって、引き下がれるものかよ。地獄の神だかなんだろうが、絶対に捕まえてやる!」


 ポケナビとは便利な機械で、一度通った道はちゃんと、精密に記憶してくれる。そのおかげで、少年は一日もかからず、問題の沼へとやってくることができた。

 この日はあいにくの曇りで、太陽の陽が差し込んでおらず、沼もダークな雰囲気を出していた。

 ――こんなときこそ、強力なポケモンは登場するだろう。

 そう思ったそのとき、どこかの茂みから音が鳴った。しかし、どの方角からそれがなったのかはわからなかった。少年は、ついにお出ましかと思い、ノクタスを召喚し、あたりの様子を探る。

 またしても、音が鳴った。今度は方角がわかったため、すぐさまそちらを向くと、驚いたことに、そこにいたのはナックラーだった。

「なんだ、おまえか」と少年はため息をつく。「そういえば、昨日もこんな感じでお前は出てきたよなぁ」

 ナックラーは彼の足によりすがった。邪魔だな、と思いつつもそのままにさせておき、あたりの様子を再度探った。そこで、気づいたが、なにやら茂みが動く音とはまったく異なる、ざぁというような音が聞こえた。波とは違う――こう、砂が流れるような……。

 砂! 少年は、あり地獄のような沼をとっさにみた。昨日はなかったのにもかかわらず、今日は沼の中心部へと動きができている。あの中心部に何かがいるのだ。

「ノクタス、あの中心部にミサイルばりだ!」

 何かに当たる音がしたと思うと、彼らの前に、二枚の大きな翼を持つ、フライゴンが現れた。その目は威嚇的で、彼らを快く思っている様子などありはせず、むしろ、攻撃的だ。

 フライゴンは、ノクタスにりゅうのいぶきを放ってきた。それにたいして、ノクタスはタネマシンガンをそれに向かって放ったものの、レベルの差があるのか、ノクタスは力負けした。

「ノクタス、ソーラービームの用意だ! 何がきてもたえろよ!」

 相手は沼の中心部上空を飛んでいる。接近して攻撃するのには、無理があった。かといって、遠距離攻撃のわざで強力なのはただソーラービームのみ。どうしても、この攻撃をヒットさせる必要性があるのだ。だが、フライゴンにはそんなことは関係ない。容赦なく、威嚇的ななきごえと共にノクタスに攻撃を続け、どんどんとダメージを与えていく。

「いまだ、ノクタス! ソーラービームを放て!」

 と、そのとき、ノクタスは突如としてその場にゆっくりと倒れこんだ。ソーラービームチャージ中のダメージが大きく、それを放つための力も残っていなかったのだ。ノクタスは戦闘不能。

「クッ、耐え切れなかったのか。戻れ、ノクタス。すまなかったな……」

 フライゴンは、ノクタスが消えると今度は少年にその視点を定めた。そのときはまだ、少年はフライゴンの視線を感じ取っていなかったが、それを感じとったときにもフライゴンは攻撃をしてこなかった。

 その目をみて、少年は、早く帰れといっているように感じ取った。しかし、このフライゴンが、『強力な力を持つポケモン』であれば、それはまったく間違いであるはずだったのだが。

「あなた、またきたのね!」と、唐突に女性の声が少年の耳に飛び込んだ。

 それは、少年を森の外に追い返した、リングマ使いのあの女性だった。彼女は、怒った表情と声でフライゴンのように少年を威嚇しているように感じ取ることができた。

「フライゴンの目まで覚まさせて! いったい、何をするつもりよ!」

「『強力な力を持つポケモン』を手に入れる。それだけさ。それよりこっちからも訊きたいんだが、そのポケモンがこのフライゴンか?」

「さあね。さあ、そんなことより早くここから出て行って! フライゴンの眠りを妨げないでよ」

 彼女はそういうと、フライゴンを見た。だが、彼女にとっては予想外の事が起こり、驚いてしまった。フライゴンは、彼女の視線を感じ取ると威嚇をやめる。もちろん、この場合もそうさせようとして、フライゴンを見たのだが、フライゴンはその威嚇をやめようとしなかった。

「あなた、いったい、フライゴンに何をしたの?」

「関係ないだろ、何したって。まあ、攻撃しただけさ」

「攻撃したって、それだったら、フライゴンの威嚇が――」

 と、そのとき初めて女性は気づいた。少年の足元にナックラーがいることを。

「あなた、そのナックラーはどうしたのよ?」

「ナックラー? ああ、こいつは、俺によって来るんだよ。なんでかは知らないけどな」

 フライゴンは突如、威嚇の鳴き声をあげた。その鳴き声に、ナックラーはビクッとすると、彼の後ろに隠れてしまった。

「逃げてくださいっていったと思ったら、またやろうってか」と少年はつぶやくような声で言った。「なら、やってやる――」

 そこで、彼の声は女性にさえぎられてしまった。

「あなた、そのナックラーをフライゴンに返してよ」

 それについてはいささか驚いたようで、少年は面食らった。

「いったい、どういうことさ?」

「あなたが、ナックラーの近くにいるのが悪いんだ。ナックラーを返せば、フライゴンはおちつくから、怪我をすることもないだろうさ。このまま、暴走でもさせたら、死んじまうよ」

「返せっていっても、ナックラーが近寄ってくるんだから、俺はどうするもこうするもないんだよ」

「じゃあ、こっちに来てよ。ナックラーが離れないなら、あなたから離れるのよ」

 少年はためらった。なぜ、どうしなければならないのか? フライゴンが目当ての『強力な力を持つポケモン』ならば、ここで戦うべきなのだ。それなのに、彼女の言うことには説得力があり、彼女の言うとおりにやらなければということを心はいっている。

 悩んでいるそのとき、突如、フライゴンが動き始めた。標的は少年で、ドラゴンクローで少年を攻撃しようとしている。少年は、それに気づいたときにはときすでに遅し。かわすにかわせなかった。

 しかし、瞬時に彼の前にリングマが現れ、フライゴンを受け止めた。

「リングマ、きりさく!」女性の指示に従い、リングマはフライゴンを攻撃した。

「早くこっちに。フライゴンから逃げるわよ!」

 女性の指示が、少年へと告げられる。

「逃げるわけにはいかないよ。俺はフライゴンを捕まえてやる!」

 少年は、ボールに手をかけた。すると、その手にナックラーが噛み付いてきた。少年は思わず、大声をあげた。

「なにすんだ!」少年はナックラーにいった。

 そのナックラーの目は鋭くなっていた。まるで、俺がフライゴンを倒す、とでも言ってるかのように。ここは自分に任せろ。そういっているようだった。少年は、それを感じ取ると、なんともいえなくなった。ナックラーはうなずいてみせ、リングマの前に現れ、フライゴンと話し始めた。

 いったい、ナックラーは何を話しているのだろう、と少年と女性は思った。女性は、自らの見解によると、ナックラーはフライゴンの子供であるから、攻撃をするのをやめてほしい、といっているのだと考えたが、まさにそのとおりだった。

 人間でもそうだが、父は子にあまいところがある。まさに、それがポケモンにも適用されていた。

 フライゴンは沼の中央部へと姿を消した。ナックラーは、その場に居合わせて、少年のところへと戻り、その足にすがりついた。

「いったい、どうなってるんだ……?」少年は何が何かわからなくなりかけていた。


「たぶん、ナックラーはフライゴンの子供だと思うのよ」と女性は言った。

 小屋に風呂場やキッチンなどが、追加された彼女のログハウスに少年と女性はいた。女性は、少年が何かわからない状態になっている様子だったので、説明をしていたのだった。

 本来なら説明する義務はない。だが、ナックラーのこともあるので、説明しないわけにはいかなかったのだ。

「それで、フライゴンは攻撃をやめたんだろうけどね。フライゴンは、あの沼に訪ねてきた人たちに攻撃を仕掛けては、殺していった。それこそ、地獄の神と呼ばれた由縁。本来なら、あなたも殺されていたはずなんだけど、殺されなかったのはナックラーのおかげね。今回のフライゴンの騒動は、みな、ナックラーがいてくれたから収まったわけなの」

「だから、なんなんだよ?」

「今もそうだけど」――と女性は、机の上にいるナックラーをみながら――「あのナックラーはあなたが気に入ってるみたいね。たぶん、この森から出て行ってもついてくるでしょうね」

「そんなことはしったことはないですがね。まあ、確かに――」少年は言葉をきった。

「まあ、とにかくそれを伝えたかっただけ。後はあなたしだい。生きるか死ぬかもね」

「どういうことだ?」

「つまり、ナックラーがついていけなかったら、いったいどうするかということよ」

 しばらくの沈黙。少年は心を決した。

「なあ、ナックラー」――それをきくと、ナックラーは少年に視線を合わせた――「俺ときたいのか?」

 ナックラーは待ちわびていたかのように、すぐさまうなずいた。やっぱり、ナックラーはなついていたんだ、とそれをみて女性は思った。

 少年は、思わずため息をつきそうになったものの、それをこらえた。『強力な力を持つポケモン』を捕まえにきたのに「強力な力を持つポケモンの子」を捕まえなければならないとなると、当然かもしれないが。だが、彼はこのナックラーが愛らしくなってきた。命の恩人になるに値するかは定かではないが、実際そのような役割を演じたわけだし、何より、心の奥底ではこのナックラーを気に入っていたのかもしれない。


「じゃあ、俺はもういく」ログハウスの外に出ると、少年は女性にいった。

「ナックラーを大切にしてあげてね。そうだ、最後にどうでもいいことを教えてあげようか?」

「どうでもいいこと?」

「そうそう、あのフライゴンは野生なのよ。それでもって、気性が荒いの。来た人たちみなを殺すということまでするわけ。そんなフライゴンも私には、なんだか攻撃してこないのよ――だから、こうしてフライゴンの監視役をやってるんだけどね――だから、また来るときはここによってよ。ちゃんと殺されないようにしてあげるからさ」

「まったく、どうでもいいことじゃないな」少年は微笑しながら言った。「とりあえず了解した。それじゃ、俺はもういくよ」

「そういえば、あなたは何をしているの? トレーナー?」

「トレーナー」と彼はいった。「来年のポケモンリーグで、あのあほんだらライバルをこのナックラーで倒して優勝するライジとでも覚えておきなよ」

あとがき

 先代であるポケモン情報エリアの開設から、二年目となるので、二周年記念ということで、何か書きたいなぁと思いつつ、書いたのがこれです。実は、9月に入ってから構想からなにやらすべて考えて、書いたのでかなり忙しかったですが。9月は何かしら忙しい時期です。

 そんなこんなで、書いたのがこれなんですが、出来としてはいいほうかなぁと私的には思ってます。ただ、なんというか、心情が弱いかなぁと思ってはいますが。そんなできになったのも、おそらく某企画の影響だと思いたいものです。だって、9月の忙しさ下旬はその企画だもの。

もくじ