鳥の予知能力

 綺麗な青空。雲もない真っ青なそんな青空にはギラギラと輝く太陽があるだけだ。その綺麗な青空と強い日差しの太陽の下で、花たちは輝くように咲いていた。が、その花たちが咲いている場所の反対側では、土しかない場所で、花は咲いていなかった。その場所にも花は咲いていたのだが、数日前の火災で焼失してしまったのだ。

 私とブイゼルのイロル、ポポッコのポワ、ソノオタウンの人々は通称“ソノオのはなばたけ”と呼ばれるその花畑で焼失した花たちをもう一度咲かそうという試みが行われていた。花が大好きな私と町長が主催のその活動は広く浸透し、はやくはなばたけは元通りになりそうだった。

 そんな喜びがあったとき、私はシンオウに鳥が少ないことを知った。ひこうタイプのポケモンがすべて鳥であるとは限らないから、ガーメイルなどのポケモンは除外してだが。たとえば、この地にはムックルとその進化系、ムクバード、ムクホークがこの土地ならではの鳥ポケモンであるが、それ以外には主にジョウトに生息しているポケモンが多い。

 そんなことをなぜ調べたかというと、実は調べたわけではなく、シンオウに生息するポケモンについて調べていたら偶然その事実を知っただけのことだった。

 その事実を知ってから、空を眺めみてると、確かに飛んでいるポケモンはそれほど多いとはいえなかった。ジョウトを代表する鳥ポケモンはホーホーであるが、彼らは空をあまり飛ばないから空を飛んでいる姿を見ることは少ない。そのため、ジョウトも青空に鳥ポケモンが飛んでいるのをみかけるのは少ないものの、ホーホーでないポケモン??たとえば、ポッポなどが空を占めている。

 そう考えればシンオウでのこの光景は珍しいことになるのではないか。青空の下を飛ぶ鳥ポケモンをほとんどみないのだから。


 そんなことを考えてから数日がたった後、私はソノオのはなばたけの復旧活動をしているときだった。隣にいたイロルとポワが私を引っ張り注意を自分たちに向け始めた。

「どうしたの、イロル、ポワ?」

 イロルは空を指差した。私はその先を見ると、別に珍しいと思っただけで驚きはしなかった。ムックルたちの群れが飛んでいるのだけなのだ。

 いったい、このムックルの群れがどうかしたのかと思い、イロルにそういおうとしたそのときだった。私の視線に、大量の??通常のムックルの群れではないほどのムックルたちが空を飛んでいるではないか! しかもその数はゆうに百を越しているだろう。

 それは何かが起こる前ぶれなのではないかと思った。普段やらないことをやると雪が降るというが、それと同じだ。こんなほとんどないことが起こったということは何かが起こるかもしれない。が、近くにいた町の人はいった。

「お、この時期にもう始めたか」

 それをきくと隣の人は何かをいっていたようだが、私がそれを聞き取ることはできなかった。

 その日から私は何か変な感じに襲われた。なにかが来る??背筋がゾクゾクする、まるで恐怖が近づいてくるかのような。太陽は今日も強く私を照らすが、心はそれとは真逆だった。

 その私の様子にイロルとポワは気づいたのだろう。その日から一日一本ずつ花を私にプレゼントしてくれるようになった。「花は人の心を癒すんだよ」と私が常々言っていたからだと私は思う。それが続いたか、はたまた時間がたったからか、私のその変な感じは??いったい、何が起こるのだろうという気持ちは変わらなかったが??次第に収まり始めていた。



 そんなある日、私たちは夜遅くまで花畑で作業をしていた。もうこれ以上は無理だという状況まで来たので、家に帰ろうとしたとき、ポワは何かを発見したように私に知らせた。

 私はポワが示す方向をみてみたが、月こそ出てるもののあまり明るくなくて見えなかった。ただ、ボッと白い影がみえるだけ。私は近づいてみると、花に囲まれて全体的に白い鳥みたいな翼があるポケモンが眠っていた。

「トゲキッスだ」そのポケモンをみた私はそう思った。確かトゲキッスは今ではほとんど見かけられず、めったにお目にかかれないポケモンだったと記憶していた。さらに争いごとが起こる場所には現れなかったはずだ。

 そのことを思いだし、トゲキッスを再度みると、は弱々しい月の光に照らされながら気持ちよさそうに眠っていた。その姿にはどこか神秘的なものを感じさせ、私の心をはらしてくれた。そんなトゲキッスを起こすのはまずいと思い、そっとその場を後にした。

 翌日は雨が降っていて、仕事も休みだった。やることが特になかった私はソノオのはなばたけへと向かうことにした。別に珍しいポケモンであるトゲキッスを捕まえようという気持ちはなく??イロルとも仲のいい友達の関係のままだし??ただ、トゲキッスをみていると私の心が安らぐ感じがしたから会いたかったのだ。

 花畑に近づくと、何の縁かわからないけど、イロルと会った。いったい何をしていたのかを聞くと、どうやらイロルもトゲキッスをみてみたいと感じたらしい。もちろん、それは感じ取っただけなので実際どうだったかはわからない。

 雨の中で、花畑の半分に花がないという状況はとても陰鬱な場所となっていた。トゲキッスに会う前に、また、あの感覚に襲われてしまうのではないかと感じたほどだった。

 そんな花畑にある一本の木の下にその白のボディをしたポケモンはいた。どうやら、雨宿りをしているようで、いつ晴れるのだろうかと思ってるように空を眺めていた。その悲しげな姿をみて、安らぐというよりかさらに重石がかかったようになった。

 私はトゲキッスに近づいて行った。私に気づいたトゲキッスはその場から逃げ出そうとしたが、イロルが飛び出しなにやら説明をするかのようにするとトゲキッスは飛び出すのをやめた。いったい、イロルは私のことをなんと紹介したのだろうか?

「こんにちは、トゲキッス」私はトゲキッスに挨拶をした。それから何をしていたのかを問いてみた。

 トゲキッスはなにやら言っていたが、それを理解することはできないのが当たり前だったが、トゲキッスが花を指し示していたので、そこから私は想像を含まらせた。花は人の心を癒す。いや、人の心だけではない。ポケモンの心も癒すのだ。トゲキッスは心をここで癒していたのだろう。昨日、花畑の中で眠っていたことも総合すれば、それとなくそういう結論に達した。

 そして、それがわかると何か私も癒されたような感じがした。あの悲しげな姿はもうなく、この陰鬱な場所に咲き太陽に照らされていない花たちも、ちゃんと照らされているように見えた。

 そうこうして、その場に私の心がなくなってしまっているといつの間にか、トゲキッスとイロルは共に何かを話しておりどうやら仲良くなったらしい。こんな陰鬱な場所だからポワはボールにしまっていたが、私は二人の間に入れてあげようとしてポワをだした。

 その日から、花畑に行って周りに誰もいないときは、私たちの前にトゲキッスが現れるようになった。ほかの人には警戒心を抱いてるようで、イロルもその警戒心をとらせようという試みはしていないようだった。トゲキッスはあくまで私たちの友達??そんな関係になっていた。

 それに伴って、私のあの感じもいつの間にかになくなってしまっていた。トゲキッスと花の美しさ…………それを毎日みていればそうなるのも当たり前な気がする。そうして、私はそのことをすっかり忘れ、トゲチックやイロルたちと共に楽しい生活をしばらく送ることができた。

 花畑でトゲキッスを始めてみた日のようにあたりが暗くなるまで私たちは作業を続けていた。作業といってもそんなに長くかかるものではなく、後半は他たいしたことはやっていなかったが。

 もうあたりには誰もいなくなり、そろそろトゲチックが出てくる時間だろうと思っていたのだが、一向にトゲチックは姿をあらわさない。それからしばらく待ってみたが、やはりその美しい姿を私たちの前に現すことはなかった。

 私たちはトゲキッスになにかあったのではないかと懸念した。とりあえず、あたりを探すことになり、私とポワは一緒に行き、イロルは単独で探す事となった。しかし、その捜索は何の甲斐はなんにもなかった。そのとき、あの感覚が再度よぎり始めた。じわじわと??だんだん強い感じになって行った。

 ??トゲキッスになにかあった。

 しかし、そう思っても結局捜索はしようがなく、その日は床につくことになってしまったが、眠ることはなかった。

 仕事中に私はふっと思った。トゲキッスは争いごとが起こる場所には姿を現さないのではなかったか。もしかしたら、これから争いごとが起こるのかもしれない。でも、トゲキッスとはかなり仲良くなったのというのに、私たちに何の挨拶もなしに行くのはひどいではないか。



 それから確かに争いごとは起こった。花畑が少数のムックルたちに荒らされ始めたのだ。そのムックルたちをどうするかで、議論がなされ、揉め事が起こったのだ。トゲキッスはこれを予知したのだろうか? そして、あの花畑を去って行ってしまったのだろうか?

 ムックルたちが花畑を荒らしたことをみんな『ムックル花畑荒らし事件』となずけ、荒らすのをやめさせる対策を練ることになった。それについてムックルたちの生息地を調査することがなされ、その結果、生息地の食料が減っていることが原因だということがわかった。

 それを知って、私はムックルたちがあれだけの数で移動していたのはこのことが原因ではないかと思った。あの数のムックルだ。食糧不足がいずれ起こることは察しがついたのだろう。だから、新しい食料がある場所を求めて移動したのではあるまいか。そう考えればあの移動は納得が行く。

 だが、納得行かないのが私を襲ったあの変な感覚だ。なぜ、こんなことであんな感覚にみまわれたのだろうか。それが不思議でならない。


 それから数年後にその意味がわかった。いまやシンオウ全国で食糧不足になっている。各地で食料が手に入らなくなり、ほかの地方との貿易で何とか食料を手に入れなければならない。だが、野生のポケモンたちはそんなことができず、餓えで????。

 あのとき、私はこのことを感じ取ったのだろうか。そして、トゲキッスはどうしているだろうか。あのあと、トゲキッスが私たちの前に現れることはなく、その後の消息はわからないままだった。

あとがき

 WEB拍手のお礼第一弾に続き、第二弾のポケモン小説版花鳥風月シリーズ第二作です。

 この「鳥」をテーマとしたのは相当苦労して書きました。今現在のこの形を作るのには、二作没作ができました。で、この現在の形の小説なのですが、その二作の没作を組み合わせ、新しいテキストを追加して書いたという融合作品だったりします。

 前半部分は新しいテキスト。中盤部分??トゲキッスの話は没作一。終盤部分の争いごとのところは没作二。最後は新しいテキストという構成をとっています。

 この「鳥」はとても書きにくくて、本来は新しいテキストで押し通すつもりだったんですが、うまくいかず融合という形になりました。まあ、そういうことでこれは相当ひどい内容になってるはずです……。

 まあ、表テーマ「鳥」で裏テーマもとりあえず存在してるので、今まで書いたやつとしては新しいタイプなんですがね……。基本的に、テーマなし、表テーマのみになってるので、表裏テーマがあるのはなかったんですよねぇ。そういう点では成功したといえますが内容が……。

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