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オアシスの石版

 スコーピオン砂漠はイメージどおりの砂漠であった。砂がたくさんあり、太陽がかんかんに照っている。地平線に見えるものはスコープビレッジの小さな姿、どこかの森らしきもののみである。

 彼らはそんな中を歩いていた。目的地は――スコープビレッジを出発する前に村長が言っていたオアシスである。スコーピオン砂漠には二つオアシスがあり、それがさそりの形をしたスコーピオン砂漠の目になっているのだそうだ。

 砂漠の中でヒノアラシを除いた二人は大変ばてていた。ワニノコはもともとみずタイプであるから熱さには弱い。チコリータも熱すぎる陽射しは苦手であった。ヒノアラシだけが元気で、珍しく二人をリードしていた。

 太陽が一番上まで昇ったころ、三人は木を一本、遠くにあるのを見つけた。その場に着くとそこには小さな泉が湧いており、砂の色ではなく木々の色をした地面になっていた。

 彼らはそこで休むことにした。スコープビレッジを出発してからずっと太陽の陽射しに照らされていて体力を相当消耗していたのだ。チコリータとヒノアラシは泉の水を飲み、その後にワニノコは泉の中に入り体を冷やした。

「もう、これじゃ泉の水なんか飲めないじゃない」チコリータはワニノコが泉の中に入っているのを見て言った。

「ワニノコの汚れが入ってるんだから」

「いいじゃんか。まだ、水は水筒に入ってるんだろ。もし水筒の水がなくなったら俺のみずでっぽうで水を入れてやるよ」

「あなたの口から出した水なんかいらないわ」チコリータはそっけなく言い返した。

「ねえ、あれ」と、不意にヒノアラシは声を出した。「あの紫色の動いてるものこっちに来てない?」

 ヒノアラシが指しているもの。それは遠いため姿形はわからないが、紫色の動く生き物であることに間違いはなかった。それは三匹で、こちらに来ているように感じられる。彼らは紫色のものであることで警戒心を高めた。彼らの知っているこの地方での紫色の者――それはドラピオンたちに他ならない。

 そうでないことを祈りつつ、オアシスにいながらその姿を監視しているとやはりこちらに来ているようで、その者たちはやはりドラピオンであることを確認した。

「厄介だな」と、ワニノコはつぶやいた。「あいつらとできればかかわりたくないんだけどな」

「じゃあ、とっととここから逃げよう。ええっと、どっちに行けばいいんだろ……」

 ヒノアラシは地図と方位磁石(コンパス)を背負っていた小さなカバンから取り出し方位を調べ始めた。それに対して、ワニノコは言った。

「今はそんなの調べるより逃げるのが先だろ。ほら、行くぞ」

「ちょっと待って!」ワニノコとヒノアラシがその場を去ろうとしたとき、チコリータはそれを言葉で制した。

「逃げても無駄よ。奴らはすごい勢いでこちらに向かい始めているわ」

 ドラピオンたちの姿をもう一度見てみると、それは先ほどと同じ者であるか疑わしいかった。ワニノコたちがしっかり敵の姿を認識した時の歩くスピードよりも急激に早くなっているのだ。それはまるで獲物を狙っていたチーターが捕獲に入ったときのようだった。

「あのスピードじゃ逃げられっこなさそうだな」

「結局、戦うしかないってことか。はぁ、嫌だなぁ……」

「そんなことを言ったってしょうがないでしょ。さ、ポケモンを出すのよ」

 三人はピジョット、ダグトリオ、エアームドをボールから取り出した。

 それから五分も立たぬうちに三匹の紫色のさそりたちはオアシスに到着し、ワニノコたちの前に立ちはだかった。

「石版はどこだ」と、一匹のドラピオンが問いかけてきた。

「石版? 何のことだ」ワニノコは逆に問い返した。

「しらばくれるな! とっとと石版をよこせ!」

「持ってないものをどうやって渡すっていうんだ」

 ワニノコたちはドラピオンたちが言っている“石版”がここにある、という結論に到達していた。石版――それが何を意味するのかまで考えていたが、そればかりはわからなかった。だが、確実にいえることは、石版には何か重要なことが記されているのだ。

「そこまで言い張るか」とドラピオンは言った。「ならば力づくで手に入れることにしよう!」

 ドラピオンたちはミサイルばりを発射してきた。三匹同時のため、大量の数だ。

「ピジョット! ふきとばし!」

「エアームド! スピードスターよ!」

 無数のミサイルばりはふきとばしによって複数吹き飛ばされ、飛ばされなかったものはスピードスターによって蹴散らされてしまった。また、スピードスターの残りはドラピオンたちに向かって行ったが当たることはなかった。

「今度はこっちからだぜ! ピジョット! つばめがえし!」

「ダグトリオ! じしん!」

「エアームド! はがねのつばさ!」

 二匹の鳥は空を華麗に舞いダグトリオのじしんが当たることはなかった。ドラピオンたちはじしんの回避のためジャンプした。だが、空中で身動きがほとんどできない状態の時に二匹の鳥はそれぞれのわざを当てた。その時、ピジョットはつばめがえしを受けたにもかかわらずドラピオンのかみなりのキバを食らってしまった。

「もう一発食らえ!」ドラピオンは再度、ピジョットにかみなりのキバを食らわせた。こうかはばつぐんのそのわざによって、ピジョットの体力は急激に下がっている。

「エアームド! つばめがえしでピジョットを助けるのよ!」

「ダグトリオ! トライアタック!」

 ピジョットにかみついているドラピオンはトライアタックをかわしたが、エアームドのつばめがえしは食らってしまった。だが、ピジョットは開放され宙に戻ることができた。しかし、今度はエアームドがつばめがえしを受けたドラピオンではないドラピオンのほのおのキバを食らってしまった。

「俺らが三人いることを忘れては困る」と、つばめがえしを受けたドラピオンは言った。すると、あまっているもう一匹のドラピオンがダグトリオに接近してきた。キバは冷気が漂い始めているのがかすかに見て取れる。

「あなをほるだ!」

「エアームドを助けろ! ふきとばしだ!」

「させるか!」

 ダグトリオは接近してきているドラピオンをかわすため地中にもぐった。しかし、それは何の意味もなかった。接近してきたドラピオンはダグトリオが作った穴に入ってしまったのだ!

 一方、エアームド救済をしようとピジョットはふきとばしをした。だが、あまっているドラピオンがミサイルばりを放ってきて、うまくエアームドにダメージを与え続けているドラピオンには当てることはならなかたった。

「なめないで! エアームド! エアカッター!」

 かみつかれているエアームドは何とかつばさを動かしエアカッターを使った。刃となった空気はドラピオンを襲ったが、それでもなおかみ続けていた。と、その時、ダグトリオが作った穴からドラピオンが戻ってきた。ダグトリオが戻ってくる様子などない。

「ダグトリオ!」ヒノアラシは叫んだ。

「このままじゃまずい……!」ワニノコは手に力をこめつぶやいた。

「エアームド! こうそくいどう!」

 チコリータはエアームドを何とかキバから話そうとするが、そのキバは硬く逃げさせることなど許しはしなかった。こうそくいどうを使用するもキバにとらわれ、移動することなどできなかった。エアームドご自慢の鋼にひびが入り始めている。

「こうなれば……!」ヒノアラシは戦闘不能になっているダグトリオを回収し、それを首につけている首輪型回転式ボールホルダーに戻すと同時にもう一個のボールを取り出した。

「待てヒノアラシ!」それを横目で見ていたワニノコは言った。ピジョットはドラピオンのミサイルばりで今もなお攻撃されており、こうそくいどうでそれをうまくかわしている状況だ。

「そいつを出しちゃいけない。奴らが強くなるだけだ。奴らの手を見ろ、ホルダーがついているということはそこからまだ新しいポケモンを出してくるだろう」

「でも、このままじゃ――」

「いいから! それを出すのはまだ早いんだ! ――ピジョット! つばさでうつ!」

 ピジョットはミサイルばりをかわしながらうまくドラピオンにつばさでうつ攻撃を命中させた。そのドラピオンは少しよろめき、近づいたピジョットをキバで捕らえることはできなかった。だが、それを喜んでいる暇などもなかった。あまっているドラピオンがミサイルばりを放ちピジョットを狙っていたのだ。幸いにもこうそくいどうですばやさを上げているピジョットにそれが当たることはなかった。

「そうだ」と、ワニノコはその時突如あることを思った。「フェザーダンスを使え!」

 上空に戻ったピジョットはフェザーダンスを使い始めた。それによりドラピオンたちの攻撃力が下がり始めた。打たれているミサイルばりをそのすばやさでかわし、フェザーダンスを続けてドラピオンの攻撃力は急激に下がってしまった。

「今だチコリータ!」

「エアームド! こうそくいどう!」

 攻撃力が下がってしまってキバの威力も弱まったことによって、エアームドはこうそくいどうでその場を抜け出すことに成功した。持ち前の鋼はまだ砕けてはいないが、やけどを追ってしまっており、また、体力も限界に達していた。

「こしゃくなまねを!」ドラピオンの一匹が叫んだ。「ならばこれでも食らえ!」

 一匹のドラピオンはピジョットに近づきキバに大量の毒をしみこませたどくどくのキバで攻撃を仕掛けてきた。しかし、それはピジョットがかわすことがなければ当たることもなかった。

「撤収する」と、一匹のドラピオンは言った。「このことは本部に報告する」

 そう言うと、二匹のドラピオンはその場から去って行った。

 ワニノコたちはそいつらを追うことはなかった。彼らが受けたのは大きなダメージである。まだ、手持ちがあるとはいえど相手だって手持ちはいる。このまま追いかけてもやられるのがオチであろう。それに、ドラピオンのボールに収められてしまった三匹目のドラピオンもまだ体力は十分あるのだ。あのドラピオンの攻撃が続いていれば、ワニノコたちは相当なダメージを受けることになったであろう。

 ワニノコたちは早急にその場から立ち去ることに決めた。このままではいつドラピオンたちが襲ってくるかわからない。エアームドはほぼひんし状態でダグトリオは完全なひんし状態だ。まだ、主力の三匹がいるとはいえ大勢でこられては大変である。だが、ワニノコはその場から早急に立ち去るのには気乗りしなかった。

「だって、奴らが言ってた“石版”とやらがここにあるようないい振りだっただろ? もう少しここを探したほうがいいと思うんだ」

 ワニノコのその考えにチコリータは否定した。早急に去るべきだ、と。ヒノアラシもその考えだったので、ワニノコはしぶしぶ自分の考えを折、その場を去ることになってしまった。その前に、ワニノコはチコリータに「泉の中にもぐらせてくれ」と頼んだ。ドラピオンたちの戦いで疲れたので少し泉の水で体を冷やしたいのだ。

「ん?」頭から泉に飛び込んだワニノコ。すると、その目にはなにやら四角い岩――いや石があるのをワニノコは見た。ワニノコはそれが奴らが言っていたものではないかと思い、近づきそれを地上に上げてみた。するとどうだろう、その考えは当たっていた。

「何か書いてあるみたいだね」と、ヒノアラシは石版を見て言った。

 その石版に書かれていたのはスコーピオン砂漠の図であった。大分昔のもので多少の違いはあるようだがほぼ形は同じなので間違えはない。それにはスコーピオンの目となる部分――オアシス――に印が二つつけられていた。そして、下になにやら現代では用いられていない文字が書かれていた。

「一体、なんなのかしら?」

「とりあえず、重要なものであるのはたしかみたいだな。この印の片方はここだよな? ってことは、もう一つの印にもこれがあるのかな?」

「そうなのかもしれないね。だったら、もう一つの印のところに行ってみようよ! この石版が何を意味するかもわかるかもしれないしさ」

 第五話終了第六話に続く……

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