「さて、これからどうするか」
ビギーンシティに降り立った、ワニノコたちだったがビギーンシティには用がなかった。
ビギーンシティはトレンドアイランドの玄関口でたくさんの人々がやってくる巨大な町である。それ故、コンクリート尽くしのこの町に秘宝などというものは存在しないのだ。
港は低い位置にあるため、あたりに見えるのはビルばかりだ。ワニノコたちが一年前に行ったルーワドシティの町並みにそっくりだ。
「地理のほうはあまり調べなかったからなぁ……。とりあえず、案内所に行こうよ。きっと案内図があるはずだよ」
「そんなこと言っても案内所の場所はわかるの?」
「あっ……」
ヒノアラシの顔が急に落ち込んだ。すると、その様子をたった今、船から下りてきたレオンたちが話しかけてきた。
「どうしたんだ?」
そう言ったのはオオスだった。
「あ、オオスさん。いえ、案内所に行きたいんですけど、どこにあるかわからなくて」
「案内所? ああ、観光用のな。それなら――」
案内所の場所を教えようとしたオオスをレオンはさえぎった。
「ちょうどいい機会だ。ワニノコ。観光地の場所が知りたければオレとバトルをしないか?」
「な、なんだよ急に」
「お前の実力が知りたい。レジェンディアの補欠メンバーとなったお前だ。実力が劣ってないか調べてやろう」
「劣ってなんかあるもんか! これでも毎日練習をしてるんだ!」
「だったら、その力をバトルで見せてもらおうか。もしかしたら、お前の力が必要になるかもしれないからな」
「いいぜ。その挑戦受けてたってやる!」
「オオス。ヒノアラシとチコリータを宿屋に送ってきてくれ。こっちについたことも連絡をしておいてくれると助かる」
「わかった。じゃあ、二人ともこっちだ」
ヒノアラシとチコリータは、少し残念そうにワニノコたちを見ながらオオスについていった。ワニノコとレオンのバトルを見ておきたかったのだろう。この二人のライバル対決を。
ワニノコとレオンはオオスたちの逆の方向に歩いていった。
たどり着いたのは倉庫たくさん場所で、たくさんの波止場がある場所だった。あたりに人はいなく、キャモメの声や波の音ばかりが聞こえる。
「ここなら大丈夫だろう。ルールは一対一だ。いいな?」
レオンは歩きながら言った。言葉が終わってからまもなく足を止め、ワニノコにその顔を向けた。
「いいぜ」
「ならばバトル開始だ。行け! フライゴン!」
レオンは左手につけている、腕輪型回転式ボールホルダーから一個ボールを取り出し、それを投げた。まばゆい閃光の中から出てきたのはフライゴンだった。
「頼んだぜ! ピジョット!」
一方のワニノコも左手に身につけている、腕輪型回転式ボールホルダーからボールを取り出し、それを空に投げた。その中から出てきたのはピジョットだった。
「空中戦でやろうということか」レオンは言った。
「フライゴンに対してカメックスじゃ相性がいいからな。俺の力は相性の差がないこの状況でみせてやる! ピジョット! つばめがえし!」
ピジョットは高速な動きでつばめがえしをフライゴンにヒットさせた。だが、あまりダメージを受けなかったような平然な顔をしている。
「かえんほうしゃだ!」
「ふきとばしで吹き飛ばしちまえ!」
フライゴンが後ろを行くピジョットに対してかえんほうしゃを放つ。ピジョットは体勢をフライゴンに向けふきとばしをする。
かえんほうしゃはふきとばしにより、強力な勢いが失われた。だが、完全に失われたわけではなかったのでピジョットにダメージを与えることができた。
ピジョットは体勢を崩し地上に落ちそうになったが、踏ん張ったことにより落下は防ぐことができた。
「かぜおこしだ!」
踏ん張ったピジョットは上空に少しばかり戻ると風を起こし始めた。その風はかぜおこしとなってフライゴンを襲う。
フライゴンは上空にいるため、かぜおこしの追加ダメージを受けてしまい、先ほどのように平然とした顔を見せることはできなかった。
「こうそくいどうからはがねのつばさだ!」
こうそくいどうによりすばやさをアップさせ、鋼のような翼に変形させ、ピジョットは高速でフライゴンにはがねのつばさをヒットさせた。
その攻撃でフライゴンは地上へと落ちてしまった。だが、まだ、戦闘不能にはなっていなかった。
「もう一度、はがねのつばさだ!」
ピジョットは再度翼を硬くさせフライゴンへと近づいていく!
「フライゴン! かえんほうしゃ!」
もうあと少しというとき、フライゴンは突如かえんほうしゃを放った! 至近距離だったためピジョットはそれをかわすことができなかった。さらに、翼ももとの翼へと戻ってしまった。
その様子を予想していたのかフライゴンはすばやく動き出し、ドラゴンクローをピジョットにおみまいした。
「なっ!? ピジョット! かげぶんしんだ!」
「すなあらし!」
上空に押し飛ばされ体勢が整っていないままピジョットはかげぶんしんをし、分身を作り出した。
一方、フライゴンはすなおこしを始めた。あたりはすなあらしで砂が舞っている。目を開けているのも困難な状態だ。
かろうじて、指示を出している二人のところまで範囲はなかったが、ピジョットの分身がいる範囲はすべて覆っていた。
ピジョットとその分身は、すなあらしの追加ダメージによってダメージを負った。それにより、分身はあっけなく消え去り本体だけがフライゴンの視界に入ってきた。
「終わりだな。フライゴン! ドラゴンクロー!」
フライゴンは狙いを定めたピジョットにすばやく近づいていく!
ワニノコはピジョットにこうそくいどうの指示を出すが、視界が悪いためどこにこうそくいどうをすればいいのかわからなかったが、とりあえずこうそくいどうをした。
闇雲に使ったこうそくいどうで移動した先。それはフライゴンに近づいて行っていた!
当然、フライゴンはそれを見逃さずドラゴンクローをピジョットにヒットさせ、ピジョットをすなあらしの外の地面に飛ばした。
ピジョットは戦闘不能になっていた。
「戻れ、ピジョット。お疲れ様。よくがんばったさ」
ワニノコはピジョットのボールを取り出し、ピジョットに赤いレーザーのようなものをあてボールに戻した。
それと同時にすなあらしは収まり、レオンの姿とフライゴンの姿をしっかりと確認することができた。
「よくやったな、フライゴン。戻って、ゆっくり休んでくれ」
レオンはそう言いながら、ワニノコと同じようにしてボールに戻した。
「こんなもんか……」
レオンはワニノコに聞こえないような小さな声でつぶやくと、ワニノコに近づいた。
「確かに前回会ったときよりかは上がっているな。だが、まだまだオレには勝てない程度ということだ。
さて、宿屋に戻るとするか。オオスたちがお待ちかねだ」
レオンの案内で宿屋に着いた時にはすでに空が茜色に染まっていた。もうじき、この町は闇に覆われるだろう。
「お帰り、レオン、ワニノコ」
最初に出迎えてくれたのはオオスだった。先ほど別れた時よりどこか疲れたような顔をしている――ようにワニノコには見えた。
宿は大きいホテルのような建物だったが、中はそうでもなかった。建物のように高級なつくりではなく小さな宿みたいなところだった。
「二人は?」ワニノコは訊いた。
「部屋にいる。三階の三〇三だ。ところでバトルはどうだったんだ?」
「オレが勝った」
レオンは答えるのがめんどくさそうに言った。
「やっぱり、レオンは強いんだな。さすが、副リーダーだぜ」
「そんなことより連絡は取ったのか?」
「ああ――それはまた後で教える」
レオンはうなずくとワニノコが訊いてきた。
「なあ、この宿の金ってどうなってるんだ?」
「この宿は無料の施設でね。この町の町長が、この島に来る人たちのために作ったのさ。だから、金は取られない」
「さあ、ワニノコ。お前は部屋にいくといい。二人が待っていることだろう」
「レオンたちはどうするんだ?」
「私たちは任務先に向かうこととなった。だから、この町をもう発つよ」
「そうか。じゃあ、またどこかで。今度会ったときは負けないからな、レオン」
レオンとオオスは宿を出て行った。ワニノコはそれを見届けると、教えられた部屋に向かった。
空は闇に半分以上が支配されていた。
第二話終了第三話に続く……
コメントを送る
この小説に関するコメントがあればどうぞ。