次のポケモンコンテストが開催されるハジツゲタウンまでカナズミシティから行くのに一番近いのはりゅうせいのたきと呼ばれる滝を通るのが一番早い。ルリカも寄り道をせず、そのルートを通ってハジツゲタウンへ行くことを決めた。
りゅうせいのたきは滝と呼ばれているが外見では滝とは思えないところであった。左手には海が見えるが、滝など存在していない。大きな岩壁があるだけである。その岩壁こそりゅうせいのたきであるのだが。だが、そんなことを知らないルリカは不安になっていた。コンテストが開催される前にたくさんの練習をしておきたいと思っていたので、早くハジツゲタウンに到着しなければならないのに、りゅうせいのたきでない場所を通って遅く到着するのはいやだったのだ。
ルリカは近くに人がいるのを発見したので、その人に本当にここがりゅうせいのたきであるかを尋ねることにした。
「ああ、ここは確かにりゅうせいのたきだ」と、格闘家は教えてくれた。
「ありがとうございます」ルリカはお礼をいい、格闘家に背を向けその場を去ろうとしたルリカを格闘家はとめた。
「なんですか?」ルリカは振り返り訊いた。
「お前さんはポケモントレーナーだろ? いや、トレーナーじゃないとは言わせん。腰につけているベルトを見ればわかるさ」
「確かに私はトレーナーですけど、それがどうかしましたか?」
「ポケモントレーナー同士会ったが最後。ポケモンバトルをするのがマナーというものだ。それ行くぞ!」
「わわわ、ちょっと待ってくださいよ」
ルリカのその答えもむなしく格闘家はモンスターボールを投げ、まばゆい閃光の中からアサナンが出てきた。アサナンもそうだが格闘家の表情からしてもはやバトルを断ることなどできない雰囲気であることをルリカは悟った。
「もう、私はバトルが苦手なのに……。もう!」
ルリカはモンスターボールを取り出して、アーティーを出した。アサナンと正反対でその表情からはあまりバトルをしたいとは思っていなそうだった。それはルリカも同じであるが。
「うは行くぞ! アサナン! ねんりきだ!」
「アーティー、かわして! そしたら、メガドレイン!」
アーティーはすばやくねんりきをかわすことができた。かわすと、指示通りメガドレインでアサナンを攻撃したが、メガドレインもねんりきと同じくかわされてしまった。
「アサナン! めざめるパワー!」
メガドレインをかわしたと同時にアサナンはめざめるパワーで攻撃を仕掛けてきた。とっさの攻撃だったため、アーティーはそれに対応することが出来ずダメージを受けてしまった。
「そのままねんりきを続けるんだ!」
「アーティー! かぜおこし!」
かぜおこしでねんりきをはじき返そう――そう考えたルリカであったが、そんなことができるはずはなかった。ねんりきは物理的なわざではないのだ。ねんりきは見事アーティーにヒットしダメージを与えた。一方のかぜおこしがアサナンに当たることはなかった。この一撃でアーティーの体力はかなり減ってきていた。
「アーティー! しびれごなを放ってかぜおこし!」
体力の少ないアーティーはしびれごなを放ち、かぜおこしにそれを乗せた。しびれごなが普段よりすばやくまわり、アサナンはそれに対処することが出来ずまひ状態になってしまった。
「アーティー! メガドレインよ!」
相手がまひ状態で動けない今、チャンスだとばかりに一気に攻撃を仕掛け始めた。メガドレインはアサナンに直撃し、アサナンの体力が奪われアーティーの体力が回復して行く。
もう少しでアサナンの体力がなくなる――そうルリカが思ったとき、アサナンの目が青く光ったのを認めた。それから少し遅れて格闘家は指示を出してきた。
「がんせきふうじ!」
「アーティー! かわすのよ!」
アサナンのがんせきふうじがアーティーを襲った。アーティーはそれをかわすことができなかった。弱点のわざをくらったアーティーは地面に落ち、戦闘不能となっていた。
「アーティー戻って。お疲れさま」
ルリカはアーティーをボールに戻した。
「がんせきふうじをかわせると思ったのか」と、格闘家はアサナンをボールに戻しながらいった。「メガドレインを受けている時にこころのめを使っていたんだ。かわせるわけがあるまい!」
「そうだったんですか。それじゃ、私はこれにて失礼します」
ルリカはそういって、りゅうせいのたきの方へと向かって行った。すると、それを格闘家はとめた。
「ちょっと待て。お前はもう一匹ポケモンを持っているのか?」
「いえ、持ってませんけど」
「だったら、まずカナズミシティに戻ったほうがいい。アゲハントを回復してやってからりゅうせいのたきに入らないと痛い目に会うぞ。りゅうせいのたきにはたくさんの野生ポケモンがいるんだからな」
「でも、今からカナズミシティに戻ってたら間に合わないんです」
ルリカはハジツゲタウンのコンテストがあることをつげ、そう幾日もないことを告げた。遠回りをする時間もなければ戻る時間もないのだ。
「そうだったのか。そりゃ悪かったな」格闘家はバトルを申し込んだことを詫びた。
「いえ、それは気にしてはいませんから気にしないでください」
「お詫びといってはなんだがこれをやろう」
格闘家は黄色いアイテムを一個取り出してルリカに渡した。
「それはげんきのかけらだ。ひんし状態のポケモンもそれで回復する。アゲハントに使ってやるといい」
ルリカはお礼をいいそれをアーティーに与えた。すると、へばっていたアーティーが少し回復した。
彼女は再度礼をいって、その場を去り、りゅうせいのたきの中へと入って行った。
りゅうせいのたきはすばらしい場所であった。美しい色の壁に滝のせせらぎ。透き通るような水……。このような自然が残っているのもめずらしいとルリカは思った。故郷、ミシロタウンも自然に囲まれている町ではあるが、美しい自然とまではいえない。
りゅうせいのたきの旅はさほど長くはなかった。入ってからものの三十分ほどで出てきてしまい、その美しさを堪能することはほとんどできなかった。しかし、彼女はその短い時間で堪能できるものは堪能することが出来た。
それからの道のりは簡単なもので、一般道路を通ればすぐにハジツゲタウンに到着することが出来た。
第五話終了第六話に続く……
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