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敗北

「それでは、次の演技はコンテスト初出場のルリカさんです! どうぞ!」

 大観衆に包まれながら、ルリカはステージに立った。ルリカがあこがれていたこの舞台に。

 ルリカは目を閉じ心を落ち着かせた。そして、目を開きボールを投げた。

「頼んだわよ! アーティー!」

 まばゆい閃光の中からアゲハントのアーティーが飛び出てきた。その美しい翼を広げた。

「円を描くようにかぜおこし! その後にしびれごな! 最後にしんぴのまもりよ!」

 アーティーはかぜおこしで起こした風の流れを円を描くようアーティーの周りに作り出した。そして、その風の流れの中にしびれごなを放った。

 しびれごなは風の流れによって、黄色い風を作りだした。その後しんぴのまもりを使い、しびれごなの効果を防いだ。

 演技が終了し、控え室に戻ったルリカ。自分の出来では非常によかったが、観客の歓声はさほどなかった。

 控え室のモニターを見てみると、今度はハシミが立っていた。ハシミの一次審査が始まった。

「出てきて! リリン! バブルこうせん!」

 空に舞って登場したリリンはバブルこうせんを空へ放った。

「みずでっぽう!」

 大量のバブルはみずでっぽうによって、破壊された。だが、そのはじけた時の水分がステージの照明に照らされキラキラと輝いた。バブルだけではない。みずでっぽうもだ。

 空へと向かってく美しいみずでっぽうの水からはじけだした水分がバブルこうせんの水分となり、とても美しいものとなった。

 観客はおおいにわいた。ルリカのときとは違い大歓声だった。

「すごかったね、ハシミ」

 控え室に戻ってきたハシミにルリカは感激した口調で言った。

「ありがとう、ルリカ。ルリカのも良かったよ」

「私なんてまだまだ……。観客の歓声もハシミよりは良くなかったし。これでもちゃんと練習したんだけどなぁ。良かれと思ったことが裏目に出たみたい」

「アーティーのレベルがまだ低いから無理だけど、かぜおこしをぎんいろのかぜって言うわざを覚えたらそれにしてみなよ。きっと綺麗なのができると思うわ」

「そう? じゃあ、覚えたらやってみるね」

 モニターから結果発表というビビアンの声が聞こえたので、二人はモニターに近づいた。

「一次審査が終了して、二次審査に進出する方が決まりました。次の八名です!」

 モニターに左上からコンテストパスに記録されている写真が表示されていく、その途中、ハシミの写真が出てきた。ハシミは二次審査に進出したのだ。だが、ハシミは喜ぶこともなく、ずっとモニターを見ていた。

 ルリカの写真はなかった。ルリカは一次審査落ちしてしまったのだ。ハシミを二次審査に進んだのに。

「ハシミ、二次審査進出おめでとう」

 ルリカはモニターからハシミに顔を移していった。その表情や声からは悔しいという気持ちはなさそうにハシミには思えた。だが、ルリカの内心はそれと異なっていた。

「ルリカ……」

「なに? あ、私? やっぱりダメだったよ。まだまだ練習が足りないのかな? がんばってね、二次審査」

「うん、がんばるね」

 ルリカはソファに座り込み、モニターを見ていると、対戦相手の組み合わせが発表されていた。

 ハシミを含めた二次審査進出組みは、呼びに来たスタッフと共に控え室を後にしていった。

 ハシミがいなくなるとルリカは目に涙をためながらモニターを見ていた。涙がこぼれないよう耐えながら。

 ステージでは二次審査のコンテストバトルが始まった。

 二次審査では美しさを競いながらバトルを行う。ただし、通常のバトルと異なるのはポイントゲージというのがそれぞれ割り振られており、ゲージがなくなると自動的に負けとなるシステムがある。

 また、時間制限が五分間で時間切れのときはポイントゲージが多いほうが勝ちとなる。ポイントゲージはダメージを受けたり、わざをかわされたりするとゲージが減っていくことになっている。

 ポケモンが戦闘不能になってもバトルは終了だ。ただし、戦闘不能とは言わず「バトルオフ」というのがコンテストのルールである。

 二次審査でのハシミはすばらしかった。リリンはバブルこうせんを多用し攻撃をしていたのだが、バブルこうせんを割ると美しく飛び散るのだ。それによって、相手のゲージはどんどんと下げられていく。また、バトルでもバブルこうせんは大活躍した。

 それによって、ハシミは二次審査の決勝戦へと初出場ながらも進出してしまった。

「それでは、これより決勝戦を開始します」

 ビビアンの声が会場内に響き渡る。響き渡った会場の中にハシミは立っていた。相手は男性だった。

 ハシミの的確な判断。重宝するバブルこうせん。これらが合わさり、よりすばらしいバトルをハシミとリリンは行った。

 結果はいうまでもなくハシミが優勝した。

 ハシミは青色のリボンを手に入れた。残るリボンはあと四つである。


 控え室に戻ったハシミは、まずルリカに声をかけた。

「ルリカ」

 目線を床に落としていたルリカは顔をあげた。

「あ、ハシミ。優勝おめでとう」

「ありがとう。ねえ、ルリカ。この大会じゃまだアーティーのレベルが低すぎたのよ。もっとレベルをあげたら絶対勝てるわ。だから、あきらめないで」

 ハシミはルリカの胸中を知っていた。ルリカはそれに驚いた。しかし、よく考えてみれば長い付き合いだ。それぐらいはわかるのだろう。

「ハシミ」

 と、ルリカは言った。

「どうしたらそんなに強くなれるの?」

「そうだなぁ……。練習をいっぱいすれば強くなれるよ。いっぱいいっぱい練習するんだ」

「私だって練習したよ。それなのに一次審査落ち」

「じゃあ、夢かなぁ」

「夢?」

「そう、夢。私にはトップコーディネーターになるっていう夢があるの。私はそれに向かってがんばってる。でも、ルリカは前言ってたよね? 『コンテストに出たい』って。何の目標もないじゃない。だから、勝てないのかもよ」

「私だって、中途半端に出てるわけじゃないのよ」

 ルリカはイラっとしながら言った。

「ごめんね、ルリカ。私悪いこと言っちゃったみたいね……」

 少し沈黙が続いた。ハシミはこの空間に耐えられなくなり、「じゃあ、私は行くね。がんばろう!」と一言いってその場を立ち去った。

 控え室に取り残されたルリカは考えた。

 ――夢だって? 夢なんてなくたって、コンテストに勝つことはできる。絶対に。私はそれを証明してみせよう。

 ルリカは控え室を出てポケモンセンターで一泊した。そして、次の町、カナズミシティに行くためトウカのもりへと向かった。

 第二話終了第三話に続く……

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