表彰式が終わり、ルリカは待合室で落ち込んでいた。もう少しで優勝だったというのに、負けてしまった。ぎりぎりで負けるのと大差で負けるのとでは、同じ負けるでも終わった後の感じが違うものだ。
そんな落ち込んでいるルリカを作り出した本人がその場にご登場した。
「どうしたの、ルリカちゃん?」ラッドはいった。
「あ、ラッドさん。いえ、もう少しだったのになぁと思って」
それをきいてラッドはルリカの心情を察知した。
「ルリカちゃんの戦いはすごかったよ。あれだけ強かったら、次のコンテストではリボンが取れるよ。このカイナ大会でここまでの成績を残したんだから」
「確かに人は多かったですけど、たまたま強いコーディネーターがいなかったからですよ。もっと強いコーディネーター――たとえば、本気でトップコーディネーターを目指す人たちがいれば、私なんかが決勝戦に残れるはずがなかったはずですよ」
「本気でトップコーディネーターを目指す人、か」ラッドは考え深げにいった。「このカイナ大会に限らずそうだけど、トップコーディネーターを目指していないコーディネーターはほとんどいないよ」
「え?」ルリカはいささか驚いた。
「コンテストに参加している人の、九十八パーセントの人がトップコーディネーターを目指しているというのさ。残りの二パーセントは、まあ、いろんな事情がある人もいるだろうし、ジム戦の息抜きでやる人。たぶんこのカイナ大会じゃ、そんな人はいないよ
それに、いくら強いコーディネーターがいるこの大会だといえど、トップコーディネーターになるための壁は厚いからね。絶対にこの大会ははずさないはずなんだ」
「トップコーディネーターになるには、グランドフェスティバルで優勝すればいいんでしょう? だったら、ここに参加しなくてもいいと思うんですけど」
その発言にはいささか驚いたラッドだったが、いった。
「トップコーディネーターになるには、グランドフェスティバルで三回優勝しなければならないんだよ。一回じゃない。早くたくさんのリボンを集め、グランドフェスティバルに参加するかがかぎなんだ。だから、何が何でもコンテストがあれば参加するものさ」
それをきいたルリカは、もう無理だと思った。ルイボス大会の夜、軽いのりのようにトップコーディネーターになろうときめたが、それに慣れるとは思えなくなったのだった。それに、グランドフェスティバルには五個のリボンが必要なため、合計十五回勝たなければならない。十五回といえば少なく感じるかもしれないが、かなりの数である。
ルリカはその気持ちをラッドに打ち明けてみた。すると彼はそれを笑って返した。
「そうかなぁ? ルリカちゃんには結構素質があると思うよ。がんばればトップコーディネーターも夢じゃないって」
「でも、私はまだリボン〇個よ? どうやったらトップコーディネーターになれると思いますか?」
「この大会で健闘していた君だ。俺にだって、ひけをとらない戦いをしていたじゃないか。この大会では俺がリボンを取っちゃったけど、俺がいなかったら君がリボンを取れていたよ」
「でも、今まで私は決勝戦に参加してきたんですけど、一回も優勝できなかったんですよ?」
「う〜ん、やっぱり、夢じゃないかな?」
「夢?」
「うん。何か目標があって戦うんだ。そうしたら絶対に勝てると思うけどなぁ」
「でも、私はトップコーディネーターになるって――」
ルリカの言葉をさえぎってラッドはいった。
「それは強い意志なの?」
「それは…………」ルリカは口ごもった。
「それじゃダメだよ。ちゃんと強い意志を持っていないと。強い意志じゃなければ意味はないよ」
そういわれてルリカははっとした。
「さて、俺はそろそろいくよ。ルリカちゃんは、次のヒワマキシティのコンテストには参加するの?」
「え、ああ、はい。参加しますよ。ラッドさんは?」
「俺は、ヒワマキのには出ないよ。俺がいないんだ。ルリカちゃんの実力なら優勝できるから、がんばってね!」
ラッドはそういってその場を退場した。
ルリカははっとした理由を考え、自分も会場から退場した。
ポケモンセンターに戻った彼女は考えた。強い意志……トップコーディネーター……。
ラッドもそうだったが、ハシミも同じことを言っていた。夢を持て、と。
ルリカのもともとの夢は、ポケモンコンテストに出場するだった。それなのに、優勝にこだわり始めたルリカ。彼女が始めてラッドとあったとき、彼女自身も気づいていた。ポケモンコンテストに出場するだけでよかったのに優勝しようとこだわり始めたのは、矛盾している、と。参加できればそれだけでいい、というのが前の意味だ。なのに後ろは、それと相反する意味になっている。
「私はコンテストが好きなんだ」ルリカはつぶやいた。「だから、出場したいと思った。それを目標に私は旅立ったし、その前の練習をやっていた」
彼女の脳内ではさまざまなことがめぐっていて、頭がこんがらがっていた。いったい、自分はどうしたいのか……と。
優勝することに執念を燃やし始めたルリカがやりたいこと…………。
その結果を出すのには、彼女のこんがらがった脳内では導き出すのに数時間も使った。それだけ悩み、考えた。それはもう「考える人」に劣らないほどに。
「私はコンテストが好き」とルリカはまたつぶやいた。「これからもずっとやりたいんだ。そして、その頂点に立ちたい…………!」
そうして、五分とたたない志向の末、彼女は結論を出した。
「私はトップコーディネーターになりたい! いや、なる!」
ルリカの夢という名の辞書に「め」という文字が加わり、ゆめ――夢が完成した。
第十七話終了第十八話に続く……
コメントを送る
この小説に関するコメントがあればどうぞ。