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第九回ポケモンコンテスト

 ポケモンコンテストコトキ大会のルリカの成績はなかなかよかったといっていいだろう。前回のルイボス大会同様この大会でも決勝戦まで勝ち上ったのだから。しかし、残念ながらも優勝することはできなかったが。

「まだまだつめがあまいね、私たち。ね、アーティー?」

 一〇一番道路を歩くいているルリカとアーティーは、コトキ大会のことを振り返っていた。コトキ大会での彼女たちの演技は必ずしも完璧なものとは言いがたいものだった。一次審査でも、ちょっとしたミスではあったもののあったし、二次審査では攻撃のつめのあまさが表にでて、準優勝という結果になってしまったのだから。

「でも、決勝戦に二度も連続でいけるなんて、私たちはきっと成長したんだよね。これからもがんばればなんとかなるよ」

 ラッドとであった彼女にとっての第六回ポケモンコンテスト。そのときにコーディネーターを引退しようと考えていた気持ちが、今ではほとんど彼女の心に残っていなかった。心を合わせることを成し遂げた、二人のコンテストの成績はぐんぐんあがっていて、今では決勝戦まで上り詰めることができるようにまで成長したのだから。今のところ引退する理由もあるまい。

 心を合わせる――それを達成するのは、わけないことだった。ラッドと出会う前までは、基本的にボールの中にいたアーティーだったが、その後は、外に出えていたルリカと行動を共にしていただけだ。それだけで、心を合わせるということは達成することができた。

「さあ、ついた」二階建で屋根が茶色い家の前に着くとルリカはいった。そして、ドアを開けていった。「ただいま!」

 次のポケモンコンテストはコトキタウン南にあるミシロタウンで開催されることになっていた。ミシロタウンといえば、ルリカの故郷であり、大会が始まるまでは自分の家でときを過ごそうと考えていたのだ。

 突然帰ってきた娘に、ルリカの母は驚いていたものの、温かくルリカを歓迎した。そして、今までの旅のことをルリカは話して聞かせた。リボンはまだ〇個であること。いろんなライバルと会ったこと。ハシミと戦って負けたこと。コーディネーターをやめようと本気で考えたこと……。まだ、一年とたっていないこの旅だが、話すことはたくさんあった。

「そして、今度ミシロでポケモンコンテストがあるから、帰ってきたの」と、そういってルリカは話を結んだ。

「大変だったのね。まだ、そんなにたってないのに、どこか成長したみたい。ミシロのポケモンコンテストにルリカが出場するなら、私もいかなきゃ」

「どうして、お母さんが?」

「もちろん、応援に決まってるでしょ。ルリカの初リボンを手に入れるための!」

 ルリカは、少しあせりながら来なくていいよと母にいったが、やはり母は来ることになった。はずかしいから、というのがルリカのいいわけだったが、それはまだリボン〇個ということからの謙遜だと母は感じ取ったのだった。


 ポケモンコンテストミシロ大会のエントリーには長蛇の列ができていた。さすが、初日の登録となるとここまでの列ができるのである。今までルリカは初日の登録をしたことがなかったら、まさかここまでなると知って驚いたほどだ。

 とはいえ、登録はすぐ済むもので、三十分もたてばルリカの登録の順番がそろそろやってきそうになった。後ろはまだ長蛇の列を作っていて、まだまだ時間がかかりそうだったが。

 そして、ルリカの登録の順番が来たときだった。突然、彼女の前に一人の女が横入りをしてきて、エントリー登録を始めたではないか。

 当然のことながら、ルリカは怒った。

「ちょっと!」と荒い口調で言った。「横入りしないでください」

 ルリカの気持ちを知ってか知らずか、その女はその言葉に返事もしなければ振り向きもせず、登録を済ませ、さっさとその場を後にしていった。ルリカは急いで、エントリーを済ませその女の後を追った。

「ちょっと! 何で横は入りしたのよ」

 今度は女は振り向いた。まだ若いが、ルリカと比べれば六歳ほど年齢差がある女で、白と赤のラインの入ったジャンパーを着ている。

「まあ、気にすることでもないやろ」とその女はいった。

「気にすることです!」

「まあまあ、そんなにおこらんとええやないか。登録はすぐできたんやし」

 悪ぶれた様子もないこの女の言葉に、ルリカはかんしゃくを起こしそうな状態ながらも、続けていった。

「そういう問題じゃないわ。こういうのは――」

「そんな気にせんとしとき。怒ると体に悪いで」

 それを聞きルリカはついにかんしゃくを爆発させた。さすがに相手は年上らしいし、マナーをわきまえている彼女は、罵声はいわなかったものの、その声の荒さといえば、罵声にも聞き取ることができないわけでもなかった。

「あーもう」と女はいった。「うちには練習があんねん。そこまでにしてもらえへんやろうか?」

「そこまでって、あなたね――」

「わかったわかった」女はあわてて言った。「反省すりゃいいんやろ、反省すりゃ?」

「その話し方じゃ結局は反省してないんじゃない」

「もうええわ。コンテストで決着をつけんか?」

「どういう意味?」

「うちがまけたら、あんたにあやまるし、今後はあんなことはせえへんよ」

 ルリカはその提案について反論をしようと思ったが、女がそれをさえぎった。

「これ以上いうことはあらへん。いい加減ここまでにしようや。また、今度コンテストで」

 そういって、その女は立ち去ろうとしたが、何かを思いだしたようにきびすを返してきていった。

「あんた名前は?」

「ルリカ」ルリカはそっけなく答えた。

「うちはミール。コンテスト逃げださへんようにな」

 ミールはそういってその場を去っていった。


 ポケモンコンテストミシロ大会当日、ルリカはいまだにいらだっていた。あの女――ミールのことが気に食わなかったし、あの態度にも彼女にとってはイラつくのだ。とはいえ、いらだったままでは、心を合わせる――ルリカはこれを心の連携と名づけたが――ことなどすることができないから、冷静さをたもつよう努力していた。

 彼女にとってはうれしいことに、彼女の一次審査の演技をするまでミールと会わなかったので、一次審査は綺麗に決めることができ、満足のいくできをすることができた。だが、二次審査進出が決まったとき、ルリカにミールは話しかけてきて、いやでも話さなければならなかった。

「あんたも二次審査出場か」ミールの最初の言葉がこれだった。

「ええ、そういうあなたもね」

「うちをなめたらあかんよ。それでもって、あれをみたかい?」

 ミールが指差した先を追うと、それはモニターだった。モニターにはトーナメント表がいつのまにかに発表されており、ミールとあうには決勝戦まで勝ち上らなければならなくなっていた。

「うちは絶対いけるけど、あんたはどうかな」

 ミールはそういやみをいって、その場を立ち去った。ルリカは鋭い視線で、ミールをみていた。

 ミールの自身がどこから来たのかは不明だが、その実力は確かなものであった。宣言どおりミールは、決勝戦まで勝ち上り、優勝へと王手をかけた。一方のルリカは、ミールへのイラだちやライバル心への集中力がそれていたため、苦戦をするものの、ぎりぎりの戦いで決勝戦まで勝ち上ることができた。

「それでは決勝戦、ルリカさん対ミールさんの対決を始めます」

 ビビアンの声が会場に響き渡った。ミールは余裕の構えをしているが、ルリカは鋭い視線をミールに投げかけていた。その表情をみたルリカの母はいったい何事だろうと思ったほどだった。

「それでは制限時間五分。スタート!」

「いくのよ、アーティー!」

「いくんや、ウリムー!」

 ルリカはアーティーをだし、ミールはウリムーを出してきた。

「ウリムー、こなゆきや!」

 先手を打ってきたのはミールだった。このコンテストの環境でのウリムーの動きは遅いはずなのだが、すばやい動きでこなゆきを放ってきたので、アーティーはかわすことができなかった。

「そのまんま、れいとうビームや!」

「アーティー、かわして!」

 完全にかわしきることはできなかったが、アーティーは攻撃態勢が整っていたので、ぎんいろのかぜを放った。

「ウリムー、こらえる!」

 ウリムーはぎんいろのかぜを受けたものの、持ち前のポーカーフェースを使いあまりダメージを受けていない表情を見せ、ポイントの減少を最小限に食い止めた。

「アーティー、しびれごなからかぜおこしよ!」

「ウリムー、しろいきりからこなゆきや!」

 アーティーがもっとも得意とするコンビネーションわざが放たれると、あたりにはきりが立ち込めていたが、かぜおこしによって吹き飛ばされる――と思われた。だが、きりが吹き飛ばされることはなかった。きりは、こなゆきで凍っていた。氷は壁となり、そして、かぜおこしで吹き飛ばされることなく、アーティーの攻撃はウリムーに届かず、ルリカのポイントは激減した。

「氷の壁を越えて、ぎんいろのかぜよ!」

 アーティーは、壁の上空へとあがった。だが、ミールはそれを待っていましたとばかりにウリムーにすばやく、れいとうビームの指示を出した。あまりの唐突な出来事にアーティーはそれをかわすことなく、れいとうビームにあたってしまった。

 残り時間約三分残っているが、アーティーはここで戦闘不能――バトルオフとなってしまった。つまり、ルリカの負けだ。

 大会が終わった後、ミールはルリカの前に一回だけ姿を現した。

「なかなかいい演技やったよ。まあ、うちにはかなわへんけどな。ま、うちはこれで失礼するわ。あんたもがんばりや」

 ルリカのプライドが傷つけられた瞬間でもあった。


 ルリカが家に帰ると、表情について問いかけられたので、ミールとかかわりあっている話を母にした。

「ルリカはプライドが高すぎるのよ。悪いと思ったことに反論するのはいいけど、すべて反論すればいいってわけじゃないのよ」

 母はブラッドの話も聞いていたから、ルリカに注意した。

「でも、次はがんばりなさいよ。私もそのミールって子にはあんまりよくは思わないから。今度あったら、絶対に倒すのよ」

「うん」やや力なさげにいった。

「次はカイナシティだったわね? 応援にはいけないけど、ここから応援してるわ」

「ありがとう。今度こそ優勝してみるよ」

 ルリカは少し元気を取り戻した。

 第十五話終了第十六話に続く……

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