大会が終わり、ルリカはポケモンセンターの部屋のベッドに寝そべり、今回のルイボス大会のことを考えていた。
結果としては彼女にとっては満足できるものだった。今まで、決勝戦まで勝ち上ったことがないのに、勝ち登ることができ、もう少しのところで優勝することすらできたのだから。それにカストもいっていた。あの実力でリボン〇は信じられない、と。
だけど、それで優勝はできなかった。相手が悪かったといえばそれで終わりだ。だが、そんなことをいっていればいつまでたっても優勝はできないだろう。
「う〜ん、私には後、夢が足りないのかなぁ?」
ベッドに寝そべっているときも彼女の頭の上にいるアーティーは、元気よく返事をした。まるで、「そうだよ!」と同意を表しているように。
「夢かぁ。私に夢なんてあるのかなぁ」
彼女の夢は、ポケモンコンテストに参加する、ということだった。だが、第六回のコンテストのときラッドに言われたとおり、優勝するにはポケモンコンテストに参加するというだけでは意味のないことだ。今の彼女には夢のゆの字も頭の中に記憶されていなかった。
トップコーディネーター。そんな単語が脳裏に浮かぶと、つぶやいた。
「そういえばハシミは『トップコーディネーターになる!』とか言ってたなぁ」
トップコーディネーター。それは、ポケモンコーディネーターとしての最高位の地位。たくさんのコーディネーターがあこがれる場所だ。それになるには、たくさんの努力が必要である。
「私も……それになろうかな」
彼女の心に夢のゆの字が刻まれた。
次のポケモンコンテストが開催される場所は、コトキタウンである。ルイボスタウンからコトキタウンまで戻るのには、相当大変な道のりなものの、その大会に参加するためにコトキタウンへと彼女は向かっていた。
遠い距離なだけに、開催までの準備期間が長く、ルリカとアーティーの練習もかなり進んでいた。次こそ、優勝をする――それが、一人と一匹の目標となり、いつしか互いの目標となっていた。心がどんどんと合わさっていった。
そんなコトキタウンへ向かう途中の一一〇番通りで、もうすぐコトキタウンが目の前になる場所へ来たときのことだった。
強い日差しが照りつけていた午前に対し、午後は強い雨が降りつける天気に変化していた。彼女は雨対策をしていたものの、コトキタウンまでいくための用水路の水増しによって、水が元に戻るまでまたなければならなかった。
そんなとき都合よく、近くに家があったので、彼女はそこで雨宿りをさせてもらおうと、ドアをノックした。
「からくり……やしき」
表札には「からくりやしき」と書いてあった。何か、からくりでもあるのだろうか、と考えつつ、ノックに対する応答が来るのを待っていた。しかし、何分まっても応答が来ることはなく、ドアノブに手をかけると鍵は開いていた。
「誰かいませんか?」
そういいながら、ドアを開けると、そこは昔ながらの家で、部屋の中央にテーブルが置いてある家だった。その家の中には誰もいなかった。
留守か、と少し残念そうにドアを閉めその場を後にしようとすると、向こう側から人がやってきて、彼女に話しかけた。
「君はこの家に興味をもったのかね?」
その質問にはいささか面食らったルリカだったが、興味を持ったのではなく雨宿りがしたい旨を告げた。
「ふむ、この雨だからね。いいよ、雨宿りをさせてあげよう」
「え、あなたがこの家の持ち主さんですか?」
「いかにもそのとおり。まあ、入って入って」男はうれしそうにドアを開け、ルリカを招き入れた。
男は、初老を迎えているだろうという年齢の頭ははげてしまっている。ひげはないが、ぐりぐりめがねににたようなめがねをしているのが、印象的だ。身長は低く、ルリカと同じぐらいである。
「わたしは、からくり大王という」部屋に入ると男はいった。「この家が何の家かは知ってるね?」
ルリカは正直に知らないと告げた。
「おや、そうか。じゃあ、説明してあげよう。この家はいろんなからくりがある家で、誰でもそのからくりを突破するゲームに挑戦できるんだよ。お金は一切取らない。君も雨宿りの間暇だろうから、挑戦しようじゃないか」
いや遠慮しておきます、とルリカに言わせる暇もなく、からくり大王は、準備を進めだした。
玄関と真正面にある掛け軸を上にあげると、そこには通路ができていた。からくり大王は、ここからからくりゲームに挑戦できる旨をルリカにつげ、ルリカをそこに押し込み、ゲームを無理やりスタートさせた。
「まったく、何なのかしら、あの人。早く終わらせようね、アーティー」
アーティーは返事をした。
最初に出てきたのは、一畳分しかないスペースで、赤いスイッチがあった。ルリカは、そんなスイッチにはお構いなく、しきられている赤いふちがついた戸をあけようとするが、あかなかった。それでやっと、赤いスイッチに興味を示したルリカがそれを押すと戸は開いた。
「このスイッチを押せば、開くわけね」
だが、そう単純にできないのが、このからくりやしきで、今度は彼女の前に青いスイッチが現れた。今度はそれを押すと、青いふちの戸が開くが、赤のふちの戸は閉まった。それが繰り返し行われ、迷路をさまよう小人とルリカは一変した。最初の意気込みはどこかに消し飛んでしまっていた。
やっとの思いで、表に出るとからくり大王がそこでまっていた。
「どう、なかなか難しかったでしょ?」少しうれしそうにからくり大王は言った。
「なかなかどころじゃなかったですよ……」
「お疲れ様。ほら、これでも飲んで元気を出すといい」
そういってからくり大王は、ジュースを差し出してくれた。
「大王はどうして、こんな迷路を作ろうと思ったんですか?」ジュースを飲みながらルリカは尋ねた。
「わたしは昔から発明――発明といっても、こういうからくりだけど――をするのが好きでね。そのからくりでみんなに楽しんでもらいたいと思って、こういうのを作ったんだよ。まだこんな大きなからくりを作れなかったときは、夢のまた夢のものだったけど、夢がかなってやっとこうさ」
からくり大王は夢を実現したんだ、と彼女は考えさせるように心の中でつぶやいた。そして、夢とはいったい何なのだろうと考えた。夢をかなえるために、いったいどんな努力をしたのだろうか。その質問をしようと思ったが、結局はいえずじまいだった。
もう一度考えた。夢とはいったい何なのだろうか。
その答えを彼女は見出すことはできなかった。
そんな彼女の心理を知らず、大王は、外をみていった。
「もう外は晴れてるよ。次第に水位も落ちて、コトキタウンにいけるようになるよ」
「え、どうしてそれを?」ルリカは驚いて尋ねた。
「それは君をテレビでみたからだよ」
ポケモンコンテストはテレビ放送されているのをルリカは忘れていた。
第十四話終了第十五話に続く……
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