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心を合わせるとは何か?

 運命のポケモンコンテストキンセツ大会は開催された。

 ルリカの出番は中盤であり、緊張をほぐすにはちょうどいい順番だった。彼女は、待っている間モニターをみることはしなかった。なぜならば、みてしまうと、すばらしい演技があれば、そこで落ち込んでしまいモチベーションが下がるからだ。この大会は絶対に優勝しなければという意気込みは、彼女の人生で一番強いものだった。

 そして、ついに彼女の出番がやってきた。

「いくよ、アーティー、かぜおこし! それ!」

 ルリカはボールからアーティーを登場させると同時に、フリスビーを投げた。アーティーは的確にそのフリスビーにかぜおこしを当てた。そして、そのフリスビーは、途中で弧を描くようにカーブし、まるでブーメランのようにルリカのところにフリスビーが戻ってきた。

「もう一回よ、アーティー! そして、しびれごなからぎんいろのかぜ!」

 フリスビーが再度宙を飛び、アーティーはかぜおこしをそれに当てた。すると、今度のフリスビーはブーメランにはならず、円を描き出すループを作り出したではないか。そうなると、アーティーはしびれごなを放ちぎんいろのかぜでしびれごなを散らすという第二回のコンテストで使ったコンビネーションを使った。

 円を描いているフリスビーの中心にアーティーは移動し、しびれごなとぎんいろのかぜ、あさのひざしを使った。

 ぎんいろのかぜとしびれごなによって、綺麗なコントラストが生まれ、その中心部で光るアーティー。その周りをフリスビーが綺麗に円を描く、というルリカにとっては大掛かりな演技を見せた。そして、最後にフリスビーは、綺麗にルリカの手元に戻り、フィニッシュとなった。

 ルリカは大満足だった。審査員の評価も高かったし、自己評価も高かった。この演技なら、二次審査へいけるという自身を持った。だが、彼女は油断せずに、ほかの人の演技は見ないのを押し通した。

 一次審査が終わり、ついに結果発表となった。初めてキンセツ大会のモニターに目を移したルリカは、じっとそのモニターをみていた。

「長らくお待たせしました」ビビアンがモニターに現れた。「二次審査出場はこの方たちです!」

 二次審査出場者たちの一覧が一瞬にしてモニターを埋め尽くした。

 その中にルリカの姿はなかった。

 ルリカは一次審査で落ちた。

 ルリカはモニターを疑った。故障してるのではないか、と。自身の演技は完璧だったはずだ、落ちるはずがない、とでも言わんばかりに。だが、表示されていたのは真実であり、ルリカの思っていることは虚偽だった。それは変わることのない真実。

 ルリカは悲しみのため息と共に、イスに座り込んだ。そして、涙を流した。引退という言葉が彼女の脳内を占める。ここまでの旅は、この涙のために行われて、彼女に幸福をもたらすことはなかった。

 涙が一通り済むと、モニターを少しばかりみていた。どうやら、決勝戦が行われているようで、少年とグラエナのコンビと少女とピカチュウのコンビが戦っていた。それを確認すると同時に、タイムアップになり、優勝したのは少年とグラエナのコンビであるということを知った。この大会はついに終了した。

 ルリカは、家に帰ってから母親になんていおうかと考えた。ちゃんと見送ってくれた母親に、どんな顔をして家に帰ればいいのだろう? リボンをひとつも手に入れることがなく、ただただ無駄に旅をしただけの私をそもそも迎えてくれるだろうか?

「ねぇ、君ルリカちゃんだよね?」

 悩み、うつむいている彼女に男の声で誰かが話しかけてきた。顔を上げると、そこには動きやすそうで、あまり派手でない服装をした十四歳ほどの男がたっていた。髪型はいかにもスポーツ万能そうなスポーツ刈りである。その彼の左にグラエナが座っていた。

 優勝した人だ、と彼女は思った。

「はい、そうですけど……」ルリカは答えた。

「やっぱりそうか。君の一次審査の演技よかったよ。アゲハントのぎんいろのかぜが綺麗だった」

「ありがとうございます」ルリカは少しうれしそうにいった。

「でも、君の演技にはポケモンとの一体感がなかったなぁ。ポケモンと君の心がばらばらだよ」

「ポケモンとの心?」

「うん。もしかしてコンテスト初心者?」

「いいえ、今回の大会で六回目です。リボンは一つも持っていませんけど」

「そうか。じゃあ知っておかなきゃいけないよ。コンテストはポケモンの心とトレーナーの心が一緒にならないと勝ち抜けない。大観衆の中、一匹のポケモンの心だけじゃプレッシャーに押しつぶされちゃうよ。トレーナーと心を合わせられれば二人分の心となりプレッシャーにも押し勝てるようになるんだ」

 ルリカはこの人はなんなのだろう、と思った。ポケモンと自分の心を一緒にすることなんてできるはずがないではないか、と。でも、そういわれて、アーティーの様子がどこかおどおどしているような感じがしたことを思いだした。

「それと君には夢があるかい?」

 またか、と彼女は思った。最初のコンテストで、彼女が負け、ハシミと話をしていたとき、ハシミも同じことを言っていたのを一瞬にして思いだしたのだ。それと同時に、夢がなくても優勝できるということを証明すると誓ったことを彼女は思いだしてしまった。

「いいえ、ありません」ルリカは答えた。「ただ、コンテストに出られればいいそう思っていたのだから」

「それは厳しいなぁ。何の夢もないのにコンテストに出るなんて問題があるよ。それにただ出たいだけなら勝ち負けはどうでもいいんだろう? だったらさっきみたいに落ち込んでいる意味がわからないよ」

 確かにそうだ、と彼女は思った。よく考えれば、そのことが矛盾していることに彼女は気づいた。

「もし、このままコンテストに出るならちゃんと夢を作っておくといいよ。そして、ポケモンの心と一緒になってごらん。そしたら、絶対に勝てるからさ。それじゃ、俺は行くな」

 彼はその場から去っていこうとしたが、ルリカはそれをとめた。

「あ、あの、名前をきいてもいいですか?」

「俺はラッド。しがないコーディネーターさ」

 そういい残して、彼は去っていった。

 ポケモンセンターに戻った彼女は、ひたすらラッドのいった言葉を思いだし、そして考えた。

 ――ポケモンと心を合わせる? 夢を持て? そんなことが私にできるだろうか。

「確かに」と彼女は心でつぶやいた。「アーティーの動きが、おどおどしたような感じだったのは感じた。でも、それが心があっていないからだというのだろうか? ほかの原因もあるんじゃないのか? それに夢がなくても優勝すると、最初の大会が終わった後に決心したじゃないか。でも……」

 あれこれ考えていたが、最終的な結論はとうとう出なかった。だが、二つだけ出た結論があった。

 ひとつ、ポケモンと心を合わせるということを試してみること。

 ふたつ、もう少しコーディネーターを続けること。

 それを決心した彼女は、ハシミに連絡を取った。自分は負けちゃったけど、もう少しコーディネーターを続けるということを教えてあげるために。ライバルである前に、自身を理解してくれる大親友だから。

 第十二話終了第十三話に続く……

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