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引退?

 四回連続で負けたルリカは、そろそろコンテストに参加する意欲が失われてきた。本当に優勝することができるのだろうか? そう悩むようになっていた。そして、その答えは出てこなかった。

 ――とにかく経験をつむしかない。そう考えたルリカは、次のコンテストが行われるカナズミシティへ向かうことにした。

 シダケタウンからカナズミシティまで行くには、カナシダトンネルを通る必要があるので、彼女はセオリーどおりそこをとおりカナズミシティを目指した。カナシダトンネルは、比較的明るく恐怖心や傷を負うことなく、スムーズに通り抜けることができる。

 カナシダトンネルを抜けると、ルリカはいやな相手と再会を果たしてしまった。

「ふん、お前か」相変わらずいやみな声でブラッドは言った。

「それはこっちのセリフよ」

「ふん、お前みたいなやつに言われても痛くもかゆくもないね」

 ルリカは、カチンと来たので言葉を発しようとしたが、先にブラッドがいったのでさえぎられてしまった。

「お前は、カナズミの大会に出るのか?」

「何か文句ある?」

「ふん、オレがいないことを喜ぶんだな。オレがいたら優勝なんて程遠いからな。まあ、お前のレベルじゃ優勝どころか一次審査も突破できやしないだろうがな」

「なんですって!」ルリカは憤慨した。

「おっと、約束を忘れてもらっちゃ困る。ふん、せいぜいがんばりな」

 ブラッドは吐き捨てるように、その場に言い残して、カナズミシティとは逆の方向のりゅうせいのたきへと向かっていった。

 ルリカは認めたくなかっただろうが、ブラッドの言葉がそのまま実現した。彼女にとっての第五回ポケモンコンテストは一次審査落ちで幕を閉じた。

 今回の彼女の演技は、シダケ大会と同じものに付加を付け足したものであった。同じ演技を続けてやると、ダメだということは、第三回のフエン大会で知っていたから、付加を付け足したのだが、今回は開催までの期間が短く、満足な練習ができず未完成なままやったのがいけなかったのだった。

 その夜、今までのコンテストを振り返り、考え事をしていた。

 彼女にとっての第一回ポケモンコンテストは一次審査落ち。第二回ポケモンコンテストは二次審査第一試合落ち。第三回ポケモンコンテストは一次審査落ち。第四回ポケモンコンテストは第二試合落ち。第五回ポケモンコンテストは一次審査落ち……。

 一次審査で一回落ちると、次のコンテストでは二次審査まで勝ち残ることができるのがそれでわかった。このままいけば、第六回は優勝することができる計算となる。

 だけど、本当にそんな単純計算が通るのだろうか? 一次審査落ちしたときは、一次審査の練習を懸命にやり、二次審査落ちのときは、二次審査の練習を懸命にやる。そうしてきた彼女だったが、そのときの練習量を考えてみると、結果はおそろしいぐらい反比例している。

 引退。そんな言葉が、彼女の脳裏を横切る。膨大な練習量に加えて結果はぜんぜんダメ。努力しても報われない――いくらやっても同じこととなれば、もうそれをやめるしかない。引退。

 カーテンを閉め切って、月明かりが差し込まないポケモンセンターの彼女の部屋。それはまるで、未来の彼女を映し出しているかのようだった。スポットライトをあびることなく引退してしまった彼女を…………。

 彼女はいつの間にか、夢の世界へと入っていた。

 翌朝は曇りだった。彼女はやる気なく起き上がると、これからどうしようとボーとしながら考えていた。次のポケモンコンテストが開催されるのは、キンセツシティで、いこうと思えばすぐいける。そして、開催までの日程も多少なりと長くあるため、練習する時間はある。だが、昨日考えたあのことが思いだされる。

「膨大な練習をしても結果はダメ……か」

 彼女はどっちをとればいいか決心がつかなかった。今までの結果をぶち壊すと考えるのか、それともそれに準じてしまうと考えるのか。

 ルリカは両方とることにした。膨大な練習をして、今までの結果をぶち壊そう、と。今までの結果に準じてしまえば、引退しよう、そう決めて、キンセツシティへと彼女は向かった。

 彼女の運命を決める、ポケモンコンテストキンセツ大会に参加するために……。


 キンセツシティに到着するや否や練習を始めた。大会まであと一週間もあるといっていたものの、練習を怠けずに行い、本気で一週間の練習に取り組んだ。

 明日に大会が迫り、この日の練習は最終調整程度で終えた。当たり前だが、時間があまったので、ルリカはキンセツシティを歩き回ることにした。キンセツに一週間もいたにもかかわらず、この町をちゃんと見たこともなかったからである。とはいえ、たいした物はなく、唯一の大物であるゲームセンターは、ルリカの興味を引かなかった。

 散歩でしかなかった時間をすごし、ポケモンセンターに戻ると、ルリカは声をかけられた。

「あれ、ルリカじゃない?」

 声のほうを振り返ると、そこには、ハシミがいた。

「ハシミ!」ルリカは思わず声をあげた。「久しぶりね」

「本当久しぶり。トウカシティ以来ね」ハシミはうれしそうにいった。

「ここで何をしてるの?」

「特にこれといったことはしてないかな。ハジツゲタウンに行くつもりのその途中」

「あれ、ハシミはキンセツ大会には出場しないの?」

「うん。今回はポケモンの調整ができてないし、見送るつもりなんだ。ルリカの調子はどう?」

「まあまあってところかな。といっても、リボンはまだ〇個なんだけどね。ハシミは何個?」

「私は三つよ」

 それをきいて、ルリカは驚いた。そして、自分自身を落胆した。自分のほうが早く旅だったのに、後から旅立ったシハルにリベンの差が大きく開いてしまっているのだから、当然といえば当然だ。

「そういうルリカはこの大会に参加するの?」ルリカの気持ちも知らずハシミは質問した。

「うん。実はね――」

 ルリカは、ハシミにこの大会で負けてしまったら引退することを告げた。ハシミはライバルという関係以前に、大の親友だ。この決意を伝えておきたかったのだ。そして、それに至った事情をかいつまんで話した。

 それを聞いたハシミは驚いた。

「まだ大丈夫だよ、ルリカ」ハシミはいった。「まだ、引退するには早いよ。それだけ練習をしていればいつかいい結果がでてくるよ」

「ありがとう、ハシミ。でも、これは決めたことだし、話しちゃったからそれを撤回するわけには行かないわ」

「じゃあ、明日ルリカの応援にいくよ! 絶対優勝するように」

「ハシミ……」ルリカは心のそこで感動の涙を流した。「でも、ハシミの予定をずらすわけにはいかないし」

「そんなことは気にしないでよ。私は大丈夫よ」

「大丈夫。私は絶対に負けないから! ここ一週間の成果をちゃんと実らせるから!」

 ハシミはルリカのその言葉に負け、そして、ルリカの心のそこを読み取ったから応援にいくのをやめた。

 ――ルリカは、負けたところをみせたくないんだわ。

 ハシミは、ルリカの心のそこを完璧に読み取っていた。

「じゃあ、がんばってね」ハシミはルリカにいった。

「うん、絶対勝ってみせるから!」

 第十一話終了第十二話に続く……

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