ルリカとハシミだけが知っているリングマ事件から二年がたった。ルリカとハシミは十二歳となり、それから半年もたっているのだ。
「よし、これでよし」
ルリカは二階にある自分の部屋でバッグに荷物をつめていた。さほど大きいバッグではないのだが、バッグは巨大化していた。
ルリカの部屋は、ログハウス傾向が強く、壁、天井、床がすべて木の色だ。部屋の中央には赤いじゅうたんが敷かれている。入り口から見て左前方にはベッドが置いてあり、その手前にはパソコンが置いてある。入り口の右隣の壁にはタウンマップがかざってある。
バッグの荷造りが終わったので、ルリカは階下に向かった。階下のリビングにはテレビを見てる母親がいる。
「ママ、私行ってくるね」
ルリカが階段下でそう言うと、母親はテレビを止めて立ち上がった。
「あらもういくの? パパが帰ってくるまで待てばいいのに」
ルリカは首を振った。
「ううん。パパは忙しいんだよ。仕方ないよ。でも、これ以上私はここにとどまることはできないの。早く……早くコンテストに参加したいから!」
「ええ、わかってるわ。パパにはママから言っておくわ。がんばってね、ルリカ」
「うん! それじゃあ行ってきます!」
ルリカは階段下から走って真正面にある玄関を飛び出ていった。
「気をつけなさいよ!」
「わかってるよ!」
ルリカは手を振りながら我が家を出て行った。
ルリカは、いつもの緑のシャツを着てその上から上着をはおって、ミシロタウンを出て行った。彼女はコンテストに参加するために旅に出たのだ。
本来、ルリカとハシミは十一歳の誕生日に旅に出るつもりだった。だけど、あのリングマ事件でこっぴどく怒られてしまい、ミシロから旅立つのを謹慎させられていた。そのため、十一歳の誕生日から一年半後に旅立ちとなってしまったのだ。
そのため、ルリカは今日この日――ちょうど、二年前にリングマ事件が起こった日――に旅立っていったのだった。
だけど、この日、旅立ったのはルリカだけだった。
本当はこの日に旅立つトレーナーはもう一人いた。ルリカの親友であるハシミである。彼女も親から謹慎を言い渡され、この日に旅立つ予定だった。だが、一昨日から風邪を引いてしまったためこの日旅立つことはできなくなってしまったのだった。
ミシロタウンを旅立って三日目。ルリカはトウカシティへとやってきていた。
コトキタウンで、トウカシティへの道への交通止めをくらってしまったため、コトキタウンでおとなしく交通止め規制が解けるのを待っていたのだ。
いくら、ミシロがコトキから近いといっても、さすがに家に帰ることはできない。コトキタウンでルリカはポケモンセンターの部屋で寝泊りをしたのだった。
ポケモンセンターの部屋はトレーナーたちに対して無料で提供されており、掃除もちゃんとされており、清潔な部屋だった。部屋には二段ベッドと机が一つ。安楽椅子が二つと質素ではある。
そんなこんなで、やっとトウカシティへとやってきたルリカの目に一枚のポスターが留まった。
「『ポケモンコンテストトウカ大会開催!』かぁ。なんていいタイミングなんだろう。早速、コンテストが私の前に現れるなんて」
ルリカはポスターに書いてあった住所に向かった。そこはトウカシティ北の郊外にあり、都心部より建物は少なかった。都心部は灰色のコンクリートばかりが目に入ってきたが郊外は逆に緑色の自然が主に目に入ってきた。
その緑色の中に一色赤くなっている場所があった。四角形で赤い色をしている建物で、入り口であると思われるガラスのドアの上のほうには、リボンの形をしたオブジェがついている。そのリボンは綺麗な蝶結びで、下にある二つの紐の間に「Pokemon Contest」と書かれていた。
あれこそが、ポケモンコンテストが開催されるコンテスト会場なのだ。
ルリカはコンテスト会場内へと自動ドアをとおり入ると、中は青い床と天井、黄色系の壁でところどころ植物がみられる。
「すいません、エントリーしたいんですけど」
と、ルリカはカウンターに近づき受付員に言った。
「かしこまりました。それでは、コンテストパスをお出しください」
「あのぉ、コンテストパスはまだ持っていないんです。ここで発行できますか?」
コンテストパスとは、ポケモンコンテストに参加するために必要なカードだ。このカードには必要な情報が記載され、身分証明書などとしても使われる。
「できますよ。それでは、身分証明書みたいなものは持っていますか?」
「身分証明書?」
「ええ。トレーナーさんでしたら、ポケモン図鑑などでいいのですが」
「ポケモン図鑑は持っていませんけど。私は博士のお世話にはならなかったものですから」
「そうですか。では、こちらの用紙に必要事項をお書きください」
受付員はそう言うと、紙と鉛筆をルリカに渡した。名前、生年月日、出身地などなどを書き、それを受付員に渡した。すると、近くのコンピュータにその紙をいれると、一枚の青いカードが出てきた。
「これがコンテストパスです。大切に持っていてくださいね」
ルリカはコンテストパスを受け取った。すると、受付員はさらに続けていった。
「それと、コンテストのエントリーも完了しました。開催日時は二日後です」
二日後、コンテストは開催された。
会場にはたくさんのお客が動員されて、大歓声だった。
「それでは、これによりポケモンコンテストトウカ大会を始めたいと思います!」
ステージ上に立つドレスを着て、左目の下のほくろがある女性がマイクを持って司会をしている。
「それでは審査員をご紹介いたします。まず、左手にいらっしゃいますのが、ポケモンコンテスト大会事務局長兼実行委員会会長のコンテストさんです」
「皆さん、こんにちは。本日もよろしくお願いいたします」
コンテスタと呼ばれた人物は五十代ほどの男性で、赤い背広を着ている。首の辺りには黒い蝶ネクタイをしている。
「続きまして、ポケモン大好きクラブ会長のスキゾーさん」
「いやぁ好きですね〜」
スキゾーと呼ばれた人物も五十代ほどの男性だ。背広を着て茶色がかった赤のネクタイをつけている。
「そして、トウカシティのジョーイさんです」
「どうかよろしくお願いします」
ジョーイさんはいつもの服装だ。
「申し遅れました。私はホウエン地方のコンテストの司会をしておりますビビアンです。よろしくお願いします!」
観客の歓声がどっと沸いた。それが収まる前にビビアンはさらに続けた。
「それでは一組目行きましょう!」
コンテストの一次審査が始まった。一次審査はポケモンの魅力を見せ合う演技をする場である。
トレーナーとポケモンがステージ上にのぼり、そこでポケモンのわざなどを使った美しい演技をするだけで一見簡単そうに見えるが実際には難しい。
一次審査の演技には点数がつけられ、上位八人が次の二次審査に進むことができる。
二次審査では、進出した二名のコーディネーターが”コンテストバトル”という、ポケモンバトルを行う。
通常のバトルとは異なり、自分のポイントをいかに減らさないで相手のポイントを削るかという、ポイント削りの勝負だ。残っているポイントが多いほうの勝ちとなる。
時間制限は五分で、ポケモンが戦闘不能となってしまったら、バトルオフとして戦闘不能じゃないポケモンのトレーナーの勝ちとなる。
ドキドキ……。ルリカの胸がなっている。初めてのコンテストだ。緊張するのも無理はないだろう。
ルリカは会場の様子がみれるモニターがあるコーディネータ用控え室にある椅子に座って、モニターを見ていた。
モニターを見ていて、胸がドキドキしている中。聞き覚えのある声で誰かが話しかけてきた。
「大丈夫? ルリカ?」
「え? あ! ハシミ!」
「久しぶりね。といっても、一週間ぐらいしかたってないけど。ところで大丈夫なの?」
「大丈夫ってなにが?」
「体の調子よ。顔が真っ青よ」
「大丈夫大丈夫。緊張してるんだよ。それより、ハシミも大丈夫なの? 風邪を引いてたんでしょ?」
「ええ。でも、直ったわよ。そうじゃなきゃ旅に出るなんて許してくれないもの」
「そうだよね。ここにいるってことはハシミも参加してるのよね? 出番はいつ?」
「まだまだかな。多分最後のほうだと思うんだけど……」
「そう。私はそろそろなのよ。あの大観衆の中にでるなんて緊張するわ……」
「大丈夫よ。いつもの実力を発揮させればいいだけなんだから」
その時、入り口から声が聞こえた。それは大会スタッフでルリカの番が来たことを告げた。
「ついに来ちゃった……」
「大丈夫よ。がんばって!」
ハシミに背中を押され、ルリカは控え室を出た。
第一話終了第二話に続く……
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