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プロローグ

 暖かい気候。たくさんの街から海が見える。そんな中で生活をおくっているホウエン地方の人々。彼らは別の地方にはない新しいポケモンの競技を生み出した。

 それこそが”ポケモンコンテスト”である。ポケモンの美しさを見せ合うもので、もともとは貴族の間でやっていた。だが、それが一般に流布され、今ではたくさんの者がコンテストに参加している。

 そして、この日、ミシロタウンで十歳を向かえた少女もポケモンコンテストに参加することを夢見る少女がいた。


 ホウエン地方南西に位置する小さな田舎町”ミシロタウン”。そこで、少女は十歳を迎えた。

「はい、ルリカ。これが約束していたポケモンよ」

 ミシロタウン東にある二階建てで、屋根が茶色く木で作られていることを思わせる家の中にいる、三十代ほどの女性はそこにいた小さくて、黒髪のショートヘアーの少女――ルリカに一個のモンスターボールを渡していた。

「ありがとう、ママ。えい!」

 ルリカは母からもらったモンスターボールを空へと投げた。すると、まばゆい閃光が放たれその場に現れたのは赤いからだをした、芋虫のようなポケモン――ケムッソだった。

 ルリカはケムッソを抱き上げると角に手が刺さらないよう頭をなでてあげた。すると、ケムッソは気持ちよさそうな声をあげた。

「ママ、ハシミのところに行ってくるね。私もポケモンを手に入れたんだもん。見せてきたいし」

 ルリカは親友のハシミのところへと向かった。

 ハシミは、ルリカの幼馴染で大親友である。ハシミの家は西のほうにあり、ルリカの家の真反対にある。ルリカは西のハシミの家へと向かった。

 家に着くと、ルリカは呼び鈴を鳴らした。そして、ドアから出てきたのはめがねをかけたルリカと同じぐらいの身長であるハシミだった。

「見て見て、私もポケモンゲットしちゃった!」

「わあ、ケムッソだね。前からルリカはケムッソを欲しがってたもんね」

「うん。ケムッソは進化したら綺麗なアゲハントになるんだから」

「そうね。お母さん! 私出かけてくるね」

 ハシミは後ろにそう叫び、外に出てドアを閉めた。

「ところで、ケムッソには名前をつけたの?」

「うん、前から決めてあったんだ。”アーティー”っていう名前」

「アーティー?」

「うん、♀だったらこの名前にしようと思ったんだ。この子はちょうど♀みたいだし。それにより、今日から一緒にコンテストの練習をしよう!」

 二人はホウエン地方で開催されているポケモンコンテストに出ることを夢見ていた。ハシミはルリカより誕生日が早いため、早くポケモンをもらいコンテストの練習をしていたのだった。

 ルリカはその様子をいつもそばで見ていた。でも、それも今日で終わり。ルリカの心は躍っていた。そして、練習を始めた。


 ルリカが誕生日を向かえ半年がたった。

 むしポケモンの成長はとにかく早い。よくそういわれるが、ルリカのケムッソはそうではなかった。もらってから半年かけてケムッソはカラサリスへと進化した。

 ケムッソが進化するときはドキドキだった。ケムッソは、カラサリスとマユルドのどちらかに進化する。進化したポケモンによって、ルリカの求めているアゲハントになるかならないかが決定するのだ。

 そして、カラサリスに進化してから三週間ほどたった日。ルリカとハシミの母がトウカシティまで買い物に行くというので、二人は一緒についていった。

 買い物が終わるとレストランで食事をした。すでに、ルリカたちは食べ終わったのに親たちはまだ食べている。ルリカとハシミの二人は飽き飽きしていた。

「ねえ、ルリカ。私たちだけで遊ばない? ここにいても暇だし」

「そうだね。ママ、私たち外で遊んでくるね」

 ルリカはそう言うとハシミとともにレストランを出てトウカの西側へと向かった。

 トウカは近くの街ではあるが、二人はあまり来たことがなかった。そのため、トウカについて二人はあまり詳しくなかった。

 それがいけなかった。二人は遊ぶのに夢中で迷い込んでしまった。トウカの郊外にあるあの暗い森――トウカのもりの中に……。


 三六○度、見渡す限り木、木だった。木は集まりすぎて太陽の日光を通さなく、森の中は昼間でも真っ暗だった。森の中はいつも夜だ。時々聞こえるスバメの鳴き声。聞こえる音はそれと、風に吹かれたときの木々のざわめきのみ。両者ともないときは静寂につつまれていた。

「ここ、こわい……」

 そんなトウカのもりに迷い込んでしまった、二人の幼き少女達。ルリカとハシミは森の中をさまよっていた。

「そんなこといわないでよ、ハシミ。早く歩こうよ。いつまでたってもここから出られないよ」

「でも、こわいものはこわいし……」

「もう。どうしようかなぁ、どうにかしてここから出られないのかな?」

 ルリカたちには森から脱出する手立てがなかった。ルリカのアーティーではどうすることもできないし、買い物をするために来ただけだから何か特別な道具を持ってきたわけでもない。それに、食べ物や水だってない。

「ねえ、ハシミ。どうにかしてここから出る方法ないかしら?」

「うーん。特に何も……。こういうとき、コンパスがあればいいのに……」

「コンパスねぇ。普段、そんなものを持ち歩いている人なんて旅の人とかぐらいだけどね」

 とにかくルリカたちは歩き始めた。立ち止まっていても仕方がない。誰かが助けに来るわけでもない。自分達で脱出しなければいけないのだから。

 それから何時間がたったのだろうか? 木々の隙間から見える空は赤く染まり始めていた。それに伴って、森の中もさらに暗くなっていく。

「はぁ……。全然ダメ……」

 何時間も歩いて疲れてしまったルリカは木に寄りかかるように倒れた。同じくしてハシミも木に寄りかかった。

「これからどうしようか?」

 数分たってからハシミは静寂をやぶるように言った。

「今日は、この森の中で過ごすしかないみたい。どこか寝れそうなところでも探そう」

「でも、私のどかわいたよ」

 当たり前だ。何時間も歩きっぱなしで水分補給など一回もしていない――いや、できないのだ。あたりに水がないから。体の水がもう半分をきってしまっているのではないかとハシミは思ったほどだ。

「そうだ」

 と、まだ数分間を空けてからハシミはひらめくように言った。

「どうしたの?」

「この子がいるじゃない。出てきてリリン!」

 ハシミはボールを取り出しそれを空に投げた。出てきたのは、丸い体で色は青。頭には耳と思われる大きなものがあるポケモン――マリルだった。

「そうか、マリルのリリンだったら水を出せるもんね」

 ルリカは言った。

「ねえ、リリン。あなたの水は私たちでも飲めるのかな?」

 リリンは「どうだろう?」と首をかしげた。そもそも、リリンの口からでる水を飲むというのは気が進む話ではない。だが、二人は必死なのだ。そんなことを言っている暇はない。

「そう、わかったわ、リリン」

 リリンが首を長くかしげているため、ハシミはあきらめてしまった。どうやら、リリンの水は飲めないのかもしれない。

 と、ハシミはリリンをモンスターボールに戻そうとしたそのときだった。

 二人の前から何か音がした。草ががさと音を立てた音だ。何かが近づいてくる……。ルリカたちは視線をずっとそちらに向けていた。リリンをボールに戻そうとしているハシミの手も止まっている。

 もう一度、音がした。今度はさらに近づいてきている。二人はつばを飲み込んだ。

 そして、二人の前に現れたものを見て二人は「キャー!」と大声を立てた。二人はその場から逃げ出した。

 その現れたものは二人――いや、二人と一匹を追いかけ始めた。現れたのは体長百八十ほどでおなかの辺りに丸い円がかかれているポケモン――リングマだった。

「なんであんな奴がこんな森にいるのよ!」

 ルリカは走りながらわめき始めた。

「知らないわよ! そんなこと! あ、そうだリリン!」

 ハシミは手に持っているボールを見て思い出した。後ろを振り向くとそこにはリリンとリングマが追いかけてきている。ハシミは走りながらリリンをボールに戻した。

「一体どうすればいいのよー!」

 まだルリカはわめいている。すでに自分の理性を失いかけていた。

「落ち着いてよルリカ! さわいでたってしょうがないじゃない!」

「そんなこといっても! この状況じゃ落ち着けないわよ!」

 その時、前方左手に大きな茂みがあるのを発見した。ハシミはそこに入るようルリカに指示をした。茂みに入り込むと二人は茂みに隠れながら進んでいった。

 リングマは茂みをきりさくで切りながら追いかけてくる。

 茂みをとおりすぎると、二人はまた立ち上がり必死で逃げ始めた。だが、二人のつきも途切れてしまった。

 二人の前に現れたのは無常にも巨大な岩壁。上から見れば崖だ。二人の行く手に通行止めがかかったのだ。

 そんな時、リングマは二人に追いついてきた。そして、ゆっくりと二人に詰め寄ってくる。

「もう! お願いアーティー! どくばり!」

 ルリカはカラサリスをボールから出した。そして、どくばりでリングマを攻撃し始めた。

 もう、バトルしてリングマを倒すしか方法がない。そう考えたのだ。いつの間にか理性は戻ってきていた。

 ルリカがバトルを始めたことを見たハシミもリリンを出して、みずでっぽうでリングマを攻撃した。

 だが、もともとバトルを得意としない二人の攻撃はリングマを刺激してしまうだけだった。リングマは倒れるどころかさらにいらだっている。

 それでも、二人はがんばって攻撃を続けた。リングマのきりさくなどをかわしながら攻撃を続けていったのだ。

「アーティー!」

 そんなときだった。アーティーがリングマのきりさくをもろに受けてしまいその場に倒れたのだ! アーティーは戦闘不能だ。

「リリン! まるくなる! そして、ころがるよ!」

 リリンはまるくなるでぼうぎょ力をあげ、ころがるでリングマを攻撃し続けた。ころがるが命中すればするほどダメージは増えてゆく。だが、リングマは余裕の表情で転がってきたリリンをきりさくで攻撃した。それによって、リリンも戦闘不能となった。

「リリン!」

 二人の手持ち二匹が戦闘不能になってしまった。もう、うつてはない。それを知っているのかリングマはゆっくりと二人に詰め寄ってきた。

 もうダメか――そう考えさせられた二人。リングマは微笑し、右手を大きく挙げた。

 そのときだった。二人のつぶった目に何か強い光が当たった。恐る恐る、目を開けてみると、リングマの手は挙がったままで後ろを振り向いている。その後ろではアーティーとリリンが光っている。

 リングマは手を下げアーティーに詰め寄っていった。それでも、二匹はまだ光り続けている。その時、カラサリスの背中から何かが現れ始めた。頭には触覚らしきもの。背中には羽が生え始めた。

「アーティー……もしかして……」

 リングマは手を挙げたそして、一気にアーティーに向かって振り下ろした。だが、その手はアーティーには落ちなかった。

 リングマの横から無数の泡が襲ってきたのだ。その手どころを見るとそこには大きくなったリリンがいた。

 ちょうどその時、アーティーの光の中から美しい羽を持ったアゲハントが姿を現した。

「アーティー! 進化したのね!」

 二人はそれぞれ手持ちのポケモンに駆け寄った。そして、立ち上がり、こちらに向かってきているリングマに向き直った。

「アーティー!」

「リリン!」

「行くのよ! かぜおこし!」

「バブルこうせん!」

 横に飛んでゆく風にバブルこうせんが乗った。バブルこうせんの勢いは増し、円を描きながらリングマのおなかにそれがぶつかった。リングマの円を縁取るようにして……。


 リングマがどこかに逃げ出してしまったので、二人はアーティーを空に飛ばせどちらにいけばトウカに戻れるかを確かめさせた。幸い、崖のところにいたため簡単に空に飛ばすことができた。

 わかった方角に二人は歩いてゆき、街灯の光が二人を迎えた。

 そして、トウカにいた二人の親の元に二人は帰った。喜び半分こっぴどくしかられもしたけれど。

 プロローグ終了第一話に続く……

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