この小説は「ポケモン赤青救助隊」の番外編です。先に「ポケモン赤青救助隊」を読むことをお勧めします。
いつも通り、チーム突風のゲイトはアラシが寝泊りしていてチーム突風の救助基地にやってきた。「おはよう!」と元気に挨拶しながら基地に入った彼だったが、基地の中には誰もいなかった。
まだ、朝は早い。そんな時間なのに、最近寝坊助のアラシが家にいないというのはゲイトにとって不思議だった。それにどこに行くかとか聞いていたわけでもないので彼がどこにいったかはまったく知らない。
とりあえず、ゲイトは部屋を見渡してみたが何にもないのでアラシがいつも寝ている場所にねっころがりアラシの帰りを待った。いつの間にかにゲイトは眠ってしまい、気づいた時にはもうお昼時となっていた。
だが、やはりアラシは帰ってきていないどころか帰ってきた形跡も残っていなかった。こうなるといよいよゲイトは心配になってきた。ゲイトは救助基地を飛び出て広場へと向かった。
広場に着いたゲイトはまずは辺りを見回しアラシの姿を探した。だが、なかったのでハスブレロやブルー、ペルシアンなど広場にいる人たちにアラシの姿を見たかどうかを訊いたが答えは皆同じで「知らない」という返事だった。
さあ、こうなるといよいよゲイトは心配になってきた。“誘拐”“拉致”という言葉が頭によぎり始めた。とりあえず基地に戻っていないかと思い帰ってみると、アラシの変わりに一通の手紙がテーブルの上に置かれていた。通常、手紙はポストに入るのだが入っていないことからゲイトはその手紙を開封してみた。それにはこう書かれていた。
アラシは預かった。アラシを助けたければ一人でやみのどうくつまで来たれ。他の者に口外した場合、アラシを殺害する。
ゲイトはこの手紙を読み、体が震えた。アラシは誘拐されたのだ! そして自分をやみのどうくつまで来させようとしている。これは敵の罠だとゲイトは理解した。しかし、アラシをこのままにするわけにはいかない。ゲイトは一人でやみのどうくつに行くのは恐かったが勇気を振り絞り行くことにした。
敵の罠だろうがなんだろうが、アラシのために。
だが、決心したとはいえやはり行くのはためらいを見せた。やみのどうくつは暗いし恐かったことをゲイトは覚えていた。それにそのときは、アラシと一緒だった。そんなところに、一人で行かなければならないのだからさすがにためらいはあるだろう。
ゲイトは何とか、それをふっきりやみのどうくつに指示通り一人で向かった。
やみのどうくつはとても暗い場所である。水が滴る音がぴちょぴちょと響き、やみのどうくつに住むポケモンたちが歩く音や鳴き声がどこからか聞こえる。どこから襲われるかわからないこの状況にゲイトはとても困惑していた。だが、そんな状態でもアラシのことを考えると引き返すわけにはいかない――そう心にとめながらゲイトは奥へと進んで行った。
最下層まで二十階あるが、彼の前に立ちはだかる敵はほとんどいなかった。なぜだかゲイトはわからず、その奇妙さにさらに不安になった。こんな時にアラシがいたら――。そして、二十階に到着した時に彼の前に現れた敵は十匹にも満たなかった。
二十階の一番奥には以前、サーナイトがいた台座があるのだが、そこにアラシが横たわっているのを彼は発見した。彼は急いでアラシに近づいたが、それは不意に妨げられた。彼の前にかえんほうしゃが通ったのだ。かえんほうしゃが出た場所を振り返った彼の視線の先にいたのはフーディンとヒノアラシだった。
「きたな、ゲイト」フーディンはゲイトを超能力で入り口に吹き飛ばしてから言った。「お前が来るのを待ちわびていたぞ」
「お前か! アラシをさらった奴は!」ゲイトは立ち上がりながら強い口調で叫んだ。
「いかにも僕らだよ」と、今度はヒノアラシが言った。「実は君に話しがあるんだ」
「話?」
「そうさ。君にチーム突風から脱退してもらいたいんだよ。そして、僕たちを変わりにチーム突風に入れるよう彼に頼んで欲しいんだ」
「何を言ってるんだ。チーム突風は俺らの救助隊だ。俺がやめるわけにはいかないに決まってるだろ!」
「だったら、どうなるかわかっているんだろうな」フーディンが台座に横たわっているアラシを横目で見ながら言った。
「そんなことをしたって、俺がお前らのことを話せば無駄なことだ。『アラシを殺したのはフーディンとヒノアラシのコンビだ』ってな」
「そんなことはできんよ。私たちが今、ここでお前を倒しアラシも倒す。そうすれば我々を知るものはいない」
その返答をされゲイトはひるんだ。確かに相手は二人で、こちらは一人。一方がアラシを始末し一方がゲイトを始末する。こうなってはフーディンが言ったとおりになってしまう。かといって、ここで同意してしまえば自分はアラシと共に救助隊を続けられなくなる……。
「アラシにお前達が入るように言っても、アラシがお前達が津され去っていったのを知っていればどうにもならないんじゃないのか」ゲイトは少なからず抵抗した。しかし、その質問はあっさりと答えられてしまった。
「私のさいみんじゅつで眠らせ運こんだから私たちの顔は知られていないのだよ。お前が選べるのは二つに一つ。自分が救助隊から脱退し二人とも生き残るか、それとも、この場で二人とも息絶えるかのどちらかだ」
ゲイトは悩んだ。どちらを選べば最善の方法であるかということも考えていたが、この場を突破する方法に悩んでいるのだ。敵のフーディンとヒノアラシはゲイトの真ん前におり、アラシはその先にいる。アラシを助けるには彼らを出し抜くしかないのだ。しかし、出し抜くといえど壁しかないこの場所では出し抜くことなどできない。
そんな悩んでいるゲイトを見かねたのか、ヒノアラシは顔をあげフーディンに提案を出した。
「フーディンさん、彼にチャンスをあげてみてはどうですか?」
「チャンス?」フーディンは問い返した。
「はい。ゲイトが僕と戦って、勝利したらゲイトのパートナーと共にこの場をさらさせてみてはどうでしょうか。もし、彼が負けたならば二人とも始末すると――」
フーディンはヒノアラシがその後に何をいうのかがわかっているように、言うのをとめ、ゲイトに向かってその提案を呑むかどうかを訊ねてきた。
これはゲイトにとって望んでもいないことだった。勝利すれば自分の考えたことが実現するのだ。
「いいだろう。その提案は呑むぜ」ゲイトは元気よく返答した。
ヒノアラシはフーディンにその場から去るように目で指示し、ゲイトの前にいるのはヒノアラシだけだった。そして、その奥にはアラシが――。
ここで、ゲイトはふとあることに気がついた。目の前にいるヒノアラシの声……アラシの声に似ている。そして、あのフーディンをどこかで見たことのあるような気がするのだ。しかし、なぜこんなことをするのかがわからないゲイトはその考えを捨てざるをえなかった。
「お先にどうぞ」と、ヒノアラシはゲイトに言った。
「ならそうさせてもらうぜ! みずでっぽうをくらえ!」
ゲイトの口から強力なみずでっぽうが放たれた。勢いもあるそのみずでっぽうをヒノアラシはあっさりとまではいかないまでも、軽々とかわした。
「今度は僕の番だよ! かえんほうしゃ!」
みずでっぽうと同等――いやそれ以上の勢いのかえんほうしゃがゲイトを襲った。それは威力も巨大で、みずタイプのゲイトでさえもかなりのダメージを受けるほどだった。だが、ゲイトも負けるわけにはいかない。ハイドロポンプをかえんほうしゃに向かって放ち、かえんほうしゃによる攻撃を止めた。さらにそのハイドロポンプはヒノアラシに直撃しダメージを与えた。
「だいもんじ!」
ハイドロポンプがとまったとたんにヒノアラシはだいもんじを放った。ゲイトはそれをかわしたが、大の字の幅広なわざにわずかながらもかすってしまい、その箇所にやけどを負ってしまった。その箇所にゲイトはみずでっぽうをあてて冷やしたものの、完全になおるまでには至らなかった。
「まだ行くよ! でんこうせっか!」
高速にヒノアラシはゲイトに直撃しダメージを与えた。その速さにゲイトは対応できなかったものの、近づいたヒノアラシにかみつく攻撃を仕掛け、ダメージを与えた。かみつかれたヒノアラシは背中の炎を一気に炎上させた。それにより、ゲイトはかみつくを中止せざるを得なくなってしまった。
だが、そのまま彼が終わることはなかった。中止したと同時にハイドロポンプを放ったのだ。ヒノアラシはそれに対応することができず、炎上している背中の炎が一気に鎮火した。すると、ヒノアラシは相当ダメージを受けたのか、その場に倒れこんでしまった。
「相性が悪かったな」ヒノアラシが倒れた姿を見て、フーディンはつぶやいた。ゲイトはヒノアラシが無事かどうかを確認している時だった。「約束どおりだ。アラシを返そうではないか」
「その必要はないよ」ゲイトはヒノアラシを見つめながら言った。「もうアラシは返してもらったから」
「何を言っているのだ?」フーディンは顔色一つ変えず訊いた。
「フーディンこそ何を言ってるんだよ。ここにいるヒノアラシがチーム突風のアラシだろ? それで、お前はFLBのフーディンだ。違う?」
フーディンは目をつぶった。それからしばらくすると、ヒノアラシが唐突に話し始めた。
「さすがだね、ゲイト。どうしてわかったの?」
アラシは少し苦労しながら立ち上がった。どうやらバトルでのダメージが大きいようだ。
「やっぱりアラシだったか」立ち上がったアラシを見るとゲイトは言った。「じっくりとあの奥のアラシを見てみなよ。そのままの状態で寝かされてる。普通だったら縄で縛ったりして動けなくするじゃんか? 最初はそんなことには全然気がつかなかったけど、今じゃ変だもんな。どうせ、あれはドールなんだろうさ
それにアラシの攻撃を見たときにわかったよ。普通のヒノアラシであんなに強力なかえんほうしゃを出せるのはアラシだけだもんな!」
「こりゃあ、負けだね、フーディン」アラシはフーディンに視線を向けながら言った。フーディンはすでに目を開いていた。
「うむ。これはこれでちゃんと報告をしておこう」
「報告ってなんだよ。それに何で俺にこんなこをさせたんだ?」
「簡単なことだ。ゲイト、お前は最近、あまり救助に出ていないようだな」
ゲイトはドキッとした。確かにここ最近、彼は救助には出ていなかった。それは一人でしかいけないダンジョンとやらが出てきたことや味方になったポケモンたちの活躍ぶりによる彼の出番が減ったことでもあった。しかし、表向きのリーダーは彼であり救助に行けないということはないのだ。それにもかかわらず彼は救助に参加していなかった。
「それをアラシが言ってきたのだよ」フーディンは言葉を続けた。「お前のそのサボり癖を直してやってくれとな。まあ、アラシ一人でも出来たであろうがアラシはアラシで臆病者だし、どうすればいいかも考え付かなかったんだろうな」
「ごめんね、ゲイト。本当は僕がやるべきことだったのに」とアラシはフーディンの語が終わるといった。
「いいよ、俺が悪かったことなんだしな。これからはちゃんとやるようにする。これからもよろしく頼むぜ」
アラシとゲイトは互いに握手をしあい、フーディンのテレポートでやみのどうくつを後にした。
★あとがき★
4月の救助隊の盗難事件を書いた時から少しずつ書き始めていたのですが、ちゃんと書くようになったのはつい先日(五月二十四日)でかなり遅れました。
さて、この救助隊のゲイトは救助隊の盗難事件と共にリクエスト――現在は募集していません――をされて書いた作品です。ゲイトを主役として書くのは意外と難しいもので、結構苦労しました。救助隊シリーズは基本的にアラシの視点から書かれているので三人称で書くのは不慣れなのです。
この作品の内容は少しこんがらがっていますが、とりあえず、登場人物はいつもの人々だと思っていただければと思います。特別、新しいキャラクターは登場していませんしね。その点で言えば非常にシンプルな作品です。
次の短編作品で救助隊シリーズは見納めにしようと思っています。こちらも今年中に公開する予定です。
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