この小説は「ポケモン赤青救助隊」の番外編です。先に「ポケモン赤青救助隊」を読むことをお勧めします。
てんくうのとうでレックウザに星の破壊を頼み世界が危機から救われてから数ヶ月がたった。
異常現象はなくなりつつあるが、まだまだ完全になくなったわけではなかったけれど、以前と比べると大分平和になってきていた。そんな日でも僕たちは救助依頼を求めてポストを調べたり、ペリッパーの連絡所で依頼を探したりと大変な日々をおくっていた。
そんなある日。久しぶりに僕は夢を見た。できれば思い出したくない嫌な夢を。はっきりとは覚えていないけれど、ゲンガーがやってきて僕に何かをしていた。このゲンガーはイジワルズのゲンガーかもしれないし別のゲンガーかもしれない。
その夢で僕がうなされ始め、睡眠が浅くなってきた時、誰かが僕を起こしているのが聞こえてきた。
「ア…………シ。ア……ラシ。アラシ!」
最後の一声はとても大きな声だった。僕は驚きはっと体を起こした。その拍子に起こしてくれていた、パートナーであるワニノコのゲイトとぶつかってしまった。
「いてて……」
「ごめん、ゲイト。大丈夫?」
ゲイトが倒れているので僕は起こしてあげた。まだ眠くて、力があまり入らなかったので何の意味もなかったかもしれないけど。
「大丈夫さ。それより大変だ!」
「どうかしたの?」
「俺の……俺の救助隊バッジがなくなったんだ!」
救助隊バッジがなくなった……? 一体どうして?
ゲイトの話しによれば、昨夜、床に就いたときに頭の上に救助隊バッジを置いて眠ったのだが、今朝になってみてみるとなくなっていたらしいのだ。ゲイトは驚き、部屋中を探し回ったが見つからず、そのままアラシのところに来たのだという。
「アラシの救助隊バッジは大丈夫かい?」
「僕のバッジならいつも引き出しの中に入ってるよ」
そういい、僕は地図の近くにこないだ作ったばかりの引き出しを引いた。だけど、それは空回りすることとなった。救助隊バッジがなくなっているのだ! 僕の救助隊バッジも!
「そんな! 確かにここに入れたのに」
僕は引き出しの中を荒らすように探り始めたが、最終的には見つからずあたりが散らかっただけで終わった。
「どうする? このままじゃ依頼を引き受けることができないぜ?」
「うん……。じゃあ、警察に行こう」
「警察?」
はっとした。そうだ、この世界には警察などなかったのだ。今まで警察のやっかいになることなどなかったからすっかり忘れてしまっていた。
この世界の警察といえば救助隊だ。現に警察がやっていそうなことを僕たちはやっていた。こうなっては仕方がない。僕は初めて依頼掲示板を使うことになってしまった。
「どうしたんだ? お前達が書き込みをしてるなんて」
依頼掲示板に書き込みを終え、基地に戻ろうとしたときにチームテングスのダーテングが話しかけてきた。両端にコノハナはいない。
ゲイトは僕たちの状況を最初から最後まで説明した。
「そりゃあ、大変だな。おおかた、犯人はイジワルズのゲンガーだろうよ」
「なんか複雑な気持ちだな」と、僕はつぶやいた。
「とりあえず」と、ダーテングは言った。「その依頼、俺らが引き受けてやるよ」
「いいのダーテング?」
「ああ、いいぜ。報酬はいいよ。前のかりを返してないからな」
ダーテングに依頼をまかせ僕らは広場で情報を集めることにした。何か知っている人がいるかもしれない。だけど、ゲイトは「ダーテングに任せれば大丈夫だよ。それに犯人はゲンガーだろうしさ」といって、あまり積極的に広場での情報集めはしていなかった。
僕がなんと言ってもその考えを曲げなかった。ゲイトはいつもこうだ。僕の言うことを信じてくれないことが多すぎる。僕が言ってることが大体、あっているのに。
「あっ!」
聞き込みを続けていると、僕はイジワルズのアーボとチャーレムを見つけた。僕は二人に近づき話しかけ、質問を投げかけた。
「ゲンガー? さあ、どこにいるかは知らないねぇ」と、チャーレムが言った。
「最近、ゲンガーのやつがいないから救助活動をしてないのさ。あいつがいないと、何もできやしない」と、アーボ。
「そうなんだ。じゃあ、今日の朝もここにはいなかったの?」
「ああ、昨日の夜からさっきまでゲンガーとは一緒だったよ。ゲンガーがいろいろ手伝ってくれって言うからさ。その後はさっきも言ったとおり知らないよ」
そうアーボが言うと、二人はその場から立ち去って行った。
僕は急いで別行動を取っているゲイトを探し出し、今聞いたことをそのまま伝えた。すると、ゲイトは驚いた様子もなく言い返してきた。
「あいつらグルを組んでるんだよ。信じちゃダメだよ」
僕にはそう思えなかった。さっきの二人はいつもみたいな意地悪な感じではなかった。僕はそれを主張してみた。やっぱり、最初は否定してかかったけど、主張を続けるとゲイトをおることに成功した。
僕らはダーテングにうまく連絡をつけることに成功し、ゲンガーが犯人でないことを告げた。
「それでは一体、誰が犯人だというのだ? ほかにやりそうな奴はいないぞ」
「でも、ダーテング。ゲンガーが犯人でないことは確かなんだよ」と、僕。
「しかし、それは二人が言ったことで完全に信じられまい」
その後、ダーテングと共に僕らはアーボとチャーレムに話を聞ききに向かった。
「なんてタイミングがいいんだろうな」と、ダーテングはアーボとチャーレムに会ったときに言った。
それもそうだった。ポケモン広場の中央に行くと、アーボとチャーレム。さらにゲンガーまでもが、その場にいたのだから。僕らは率直にゲンガーに質問を投げかけた。
「ケケケ、俺がそんなことをやると思ってるのか。俺は盗んじゃいないぜ。そんなもん盗んだって何の特にもならねえ」
「しかし、お前しかやりそうな奴はいないんだ」と、ダーテング。
「俺以外にもいるだろうよ、あくどい奴なんていくらでも。お、ちょうどいい。あいつの超能力で聞いてみたらどうだ」
ポケモン広場の西から、フーディンを真ん中にリザードンとバンギラスがこちらへと向かってきていた。チームFLBだ。ゲイトはフーディンをその場でとめ、事情を説明した。
「よかろう。お前達には重要なことだろうからな」
フーディンはゲンガーをじっと見つめ始めた。目で催眠術でもかけているかのように。だが、実際行っているのは念視である。
しばらくすると、フーディンは目を一回閉じ、僕に振り向き言った。
「ゲンガーは無実だ。アーボとチャーレムもだ」
そらみろ! 僕は心の中で叫んだ。ゲイトとダーテングの勘違いを僕だけが見抜いていたんだ。これほどうれしいことはない。でも、そのうれしさがすぎて行くと悲しい気持ちになった。救助隊バッジを盗んだ犯人が誰なのか検討もつかなくなってしまった。
ゲンガーは、僕の心の中の叫びを聞いていたかのように叫び、その場を去って行った。
「詳しく状況を聞かせてくれないか?」と、フーディンが言ってきたので、一から十まですべてを教えた。と、いってもそれほどの量があるわけではないけど。
「それではなにも手かがりがないな」話しを聞き終わったフーディンが言った。
「はぁ、これからどうしよう」ゲイトはつぶやいた。「これじゃ救助活動ができないよ……」
「再発行とかはできないの?」
僕はふいに思いついたことを口にした。よくよく考えればこの言葉はなくなったときに言うべき言葉だった。
「ダメだよ、再発行はできないんだ。あれは高価なものだからね」
もうお日様が一度天に上り少し傾いている。相当時間がたち、昼食も食べていなかったので僕らはセカイイチを二つ食べおなかを満たした。
フーディンたちは忙しいということで、救助をしに向かったので、昼食後にはいなかった。いたのは、僕とゲイトとダーテングだけだった。
「もしかしたら」と、ダーテングは言った。
「見落としているかもしれないぜ? 今朝はあせって探したんだろ?」
「そうだけど、見落としていることなんてないよ。あさっていてもちゃんと探したんだから」
「いや、あるかもしれない。もう一度、みんなで調べてみよう」
二人はゲイトの家へと向かった。僕は基地で自分のバッジを探すことにした。
ゲイトの家は水辺にあり、一回は水に入らなければいけない。だから、僕はゲイトの家に行ったことはあまりない。少し前ならソルに乗せてもらって入ったが、肝心のソルはすでに僕らの救助隊からは脱退している。
「もう大きな災害が起こることはないだろう。私がこの救助隊にいる理由はない」
というのが理由だった。僕らは引き止めたけど、ソルは聞かなかった。
しばらくして、ゲイトとダーテングは戻ってきた。
「やっぱりなかったよ。一体どこにいったのかなぁ……」
「ナマズンには聞いたのか?」と、ダーテングは僕に訊いてきた。
そうだナマズンだ! 物知りなナマズンだったら何か知っているかもしれない。僕はなんてどじだったんだろう。ナマズンを忘れていたなんて。
僕らはナマズンのいる広場北へと向かい、ナマズンに事情を説明した。
「さすがにわからんなぁ。この広場に住むもの以外、誰も来ておらんからのぉ」
「じゃあ、ここにいつもいる人たちが犯人か」
「そうなるな。もっとも、グランブルは知り合いに会いに行き、バタフリーは遠くへお出かけ。キャタピーとトランセルは遊びに行っており、この広場にはおらんがのぉ」
ナマズンもわからなかった。完全に僕らはどつぼにはまってしまっていた。
もう夕暮れ時だ。この日は探すのを中断することにした。
「それじゃ、また明日」
基地の前で僕らはダーテングと別れた。
「どうしようか」ダーテングの姿が見えなくなるとゲイトが言った。
「バッジがなくなったら、俺らなにもできなくなるよ」
「だからこうやって探してるんじゃない。探せば絶対にみつかるよ」
その時、キャタピーちゃんとトランセルくんが遠くにその姿をあらわした。もう夕暮れだから家に帰ってきたのだろう。
「こんばんは」僕が二人に言った。
「こんばんは」二人が同時に言うと、キャタピーちゃんが話し始めた。
「はいこれお返しします」
キャタピーちゃんは救助バッジを取り出した。
「あ、それ俺らのバッジじゃないか!」
ゲイトは叫び、救助バッジを手に取った。
「やっぱりそうだ。どうして、これをキャタピーちゃんたちが?」
「あやしいもりに遊びに行ってきたんだけど、危険だからバッジをお借りしたんです」
「お借りしますって言う手紙をポストに入れておいたと思うんですけど」と、トランセルくん。
ゲイトはポストを開いて中を見てみた。その中には何通も依頼の手紙が入っていたが、その中で封筒に入っていない紙があったのでゲイトはそれを手にとり、内容を読んだ。それにはバッジを借りるという旨が記されていた。
「じゃあ、さっきまで探していた犯人っていうのはキャタピーちゃんたちだったのか……」僕はつぶやいた。
お騒がせな盗難事件だった。
あとがき
2006年の6月ごろだったが5月ごろだったかわかりませんが、誰かにリクエストされた作品です。救助バッジが盗まれるものみたいなリクエストだったので、こういう形になりました。
私は推理小説ばかり読んでいますが、まだまだトリックとか考えるほどの知能はないので推理はできないようになっています(汗
さて、前作の「救助隊の旅立つ戦い」とは違いバトルシーンなど緊迫する状況がないのがこの「救助隊の盗難事件」です。そして、旅立つ戦いよりもずいぶん前の話であり、ソルがいつごろ脱退したのかというのはこの小説で記されています。
彼らの時期的には連載作の「ポケモン赤青救助隊」から一番最初の短編(出来事)になるわけですので、「救助隊のクリスマス」や「救助隊のハロウィン」などより二人の信頼はまだ完全なものではありません。――まあ、ゲームでは完全な信頼にはなっていますが
次回作は「救助隊のゲイト」という作品です。こちらも追って公開します。
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